
●人間の知恵を敬い、アートを尊敬する態度を育む
本社に行って驚いたのは、社内のあちこちに歯車のオブジェや羽のような構造模型が飾られていること。ローマ帝国やエトルリア時代を思わせるドローイングやアートもあります。広報担当者のマッシモ・ペローゾさん(写真右)は「バルクッチーネの原点は、車輪やテコを使っていた時代からの人間の知恵を生かしたキッチンです。その哲学を遊び心あるアートを飾ることで、社員と共有しています」と説明します。
そこで思い出したのはイタリアの大天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ。そんな発明家の思想を感じますが、バルクッチーネにもそんな人物がいるのです。キッチンや社内のアートを考えたり作っているのは、すべてミスター・ガブリエレ・チェンタッソ。創業メンバーでありバルクッチーネのすべてのキッチンをデザイン。外部のデザイナーを入れず、製品哲学の純度を保っています。その思想はまた後ほど紹介しますね。
床もローマ時代の象形文字のような絵柄がモザイクで表現されています。イタリアの工芸がちりばめられているという印象の社内です。
オフィスの様子。デスクの脚をみてください。木組みの構造です、こういったところにもバルクッチーネの哲学が見えます。
鳥の羽の骨のような構造体。羽根のような形は、同社のキッチン扉に使われたこともあるアイディアです。どこか宮崎駿さんの描く飛行機を思わせます。
工場のマークも歯車なんですよ。人間の文明は歯車から始まった。文化と芸術を生み出したイタリアの歴史を思わせます。また歯車は、社員全員の調和を意味するものとして、バルクッチーネではシンボリックな存在です。
このほかにも社内にはライブラリーコーナーがあり、社員が本を読み、それについて話す「考える時間」を持つことを推奨しています。「社員が芸術や哲学、工芸を敬う態度を育てることを、わが社ではとても大切にしているんですよ」とマッシモさんは話します。書架にはレオナルド・ダ・ヴィンチ全集もありました。