KITCHEN
ISH2019 report

寄稿コラム:プロの目でISHを見る

2019.03.29 アムスタイル 清水克一郎 |Katsuichiro Shimizu

●不完全な魅力

数万人の来場者の人いきれの中では数時間で体力切れがやってきます。ドイツ人をはじめ体格のいいヨーロッパの人々に囲まれているとなおさらです。そんな時、片隅の小さな出展ブースに足が止まりました。

そこはスイスの“dade design”がプロデュースするコンクリートパネルのブース。無造作に立て掛けてあるコンクリートパネルですが、よく見るとコンクリート特有の気密の低いテクスチャーも表面の白化もいい具合です。

ここではコンクリートを厚さ15mmのパネル状に商品化し、表面のデザイン柄をオーダーで受注し製造しているのです。その用途はウォールパネルのみならず家具の扉材としても採用されています。近年はメラミン樹脂など再現性を競う様々な素材が開発されていますが、こういった本物の素材にかなうものはありません。

本物とは天然石や鋼材のように実は不完全なもの。一枚一枚が均一には仕上がることのないコンクリートゆえの不完全な魅力。それは“dade design”が組み上げた(ちょっとダサいけど心惹かれる)コンクリートキッチンにも感じ取ることができます。

思えばこの不完全な魅力は同じスイスの水栓ブランド“KWC”にも通じるものがあります。中でも今回発表されたキッチン水栓のERA。ワークトップへの取り付け部としては頼りないほど小さな四角い台座から立ち上がる、細身で拠り所のない弧を描くスパウト。言わば意図的にアンバランスさをデザインした形状ですが、これは決して万人受けするものではありません。

しかしこういった心に引っかかるコンセプトがゆえにファンが生まれるのです。KWCについて言えば僕もその一人ですが、それはメジャーブランドではないからこそ持てる自由さとチャレンジ精神から生まれるものなのではないでしょうか。

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