「予約の取れないオーダーキッチン」として知られる東京・代官山のアムスタイル。今年、ドイツのISHを視察した代表の清水克一郎氏による寄稿レポートを掲載します。独自の美意識で切り取ったISHレポートをお楽しみください。
●キッチンディレクターの目で見たISH
海外の見本市に来ると、さて自分に何ができるのだろうと考えます。自分とはアムスタイルのディレクターとしての自分でもあるし、いちユーザーとしての自分でもあります。
ヨーロッパの見本市は怒涛の量と勢いでモノを見せつけてきます。日本の展示会とは異なりショーアップとホスピタリティが前面にあって、それぞれのブランドの演出力の競い合いが製品そのものよりも前面に出てくるものです。ややもすれば「すごいだろう」と見せつけられて、グラス・オブ・シャンパンでもてなされて、押し切られてしまう。それでも2度、3度と同じブランドブースに足を運ぶうちに、こちらにも平常心が戻ってきます。
すると多くの製品群の中でも理解と共感の境界線が生まれてくるのです。淡々とこういう製品なんだな、という理解で終わるものと、心揺り動かされ共感してしまうものに分かれてくるのです。
あえて言えばヨーロッパの見本市は演出過多を武器にモノの真髄を見えにくくしている一面があります。訪れるものには「ときめき」をおみやげに帰ってもらうということがISHを舞台にしたブランディング手法のひとつのようです。
僕はどちらかというと職人的なのでしょうか。多分にカタチよりも仕上げや肌触りのようなものに目がいってしまいます。その背景にあるのは暮らしの中での置かれ方のような漠然としたイメージでしょうか。さてそんな視点で今回のISHを回想してみたいと思います。