●暮らしに合わせて「一流のお仕立て」
座る、過ごす、しまう、人の行動に合わせて家具を仕立て、家と一体化させてしまうのがカスタムキャビネトリー。家具の図面を引く前に、まず人の動線をフロア平面図に落とし込みます。
【ヴロツワフ ビルトインソファ】
ソファ+収納+デコレーション+壁÷家=ヴロツワフ ビルトインソファ
「こちらは新築マンションのリノベーションですが、本当に誰が考えるとこうなるの? っていうくらい使いにくい間取りで、広さにも限りがありました。収納を増やして、ソファを置きたいという要望で、ならばソファと収納を一体にしてビルトインしました」(究さん)
「お子さんが小さいので手の届くところにおもちゃがしまえれば、お片づけの習慣もできます」(美栄子さん)
「ソファ+収納だけでは、ただの便利な家具。その後ろの壁にフレームを組んで、ウッドシャッターをつける。それだけで空間に広がりを感じるでしょう? 片側は窓ですが、もう片方はミラーを仕込みました」(究さん)
「アイボリーやグレージュのカラートーンをまとめて、ソファの背はくるみボタン締めに。壁付照明をつけて温かな光を落とす。ソファが座る場所じゃなくて、居場所になります」(美栄子)
─窓の少ない壁なのに、その先に景色が広がっているように感じます。収納とソファが空間を生み出し、機能がデザインになる。元の要素は家具なのに、すごい豊かです。
たとえばこのように出窓を利用して、居場所をつくることもできるそうです。
─空間を総合的にとらえるホリスティックなスタイルですね。
【シューストレージキャビネット】
靴クローゼット+ベンチ×ファミリースペース
=シューストレージキャビネット
「こちらもリノベーションです。廊下の広さは限りがありますが、キャビネットの一部をベンチにします。小さい居場所があると、空間も広く見えます。子どもやお年寄りの靴の脱ぎ履き、玄関でのちょっとした作業など、驚くほど使い勝手がよくなります」(究)
「ホワイトトーンとマーブルのタイル、そしてモールディングやミラー。視線の先にアートをもってくることで、アーティスティックな場所になります。本当に元の考えは収納と機能動線なんですが、デコレーションの仕立て方で、狭い場所も品良く上質な場所になります」(美栄子さん)
「既成の建材のパーツの組み合わせではだめで、現場を見ながら、かまちの太さやモールディングの意匠のバランスを考える。それを自社工場で僕自身の指示でつくるから、びしっと決まる。それがKONARAHOUSEのオーダーメイドなんです」(究さん)
「大量生産の家は部材の歩留まりを考えたり、コスト面から材料を削るのが宿命です。でもKONARAHOUSEはモールディング、ケーシング、窓……小さなパーツでも必要であれば材料をたっぷりと使う。それが目に見えない豊かさを生み出しているんです」(美栄子さん)
─だんだんカスタムキャビネトリーの考え方がわかってきました。
「家を建てるたびにアイディアのストックが積み上がっていく。この考え方はもちろんキッチンにも応用されていきます」(究さん)
そして何よりKONARAHOUSEが特徴的なのは北米風のデコレーションとデザインのセンス。
クラシックほど重くなく、モダンよりはデコラティブ。シルエットは直線的なプランは甘くなりすぎず、日本のシンプリズムが混ざったスタイルです。
このスタイルを小形さんがどこで習得したのでしょうか。パーソナルヒストリーにも迫ってみました。