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Days & Stories

フレックスフォルム、その一枚に込める想い

2023.06.19 キッチンジャーナリスト 本間美紀

●「これがタイムレスということだ」とチッテリオは言う

アントニオ・チッテリオが1980年代にデザインした円形のソファ「マックス」は今年、改めて「スーパーマックス」として再フィーチャーされ、新しい張り地や色で装い直したニューモデルが展示されていた。

当時は斬新だっただろう円形のソファを螺旋階段から俯瞰で撮っている。その魅力は説明不要だ。1983年、ガブエーレ・バジリコの写真で、当時からチッテリオとは親交が深かった。

イタリアの家具ブランドの広告の歴史はほかにも、カルテルやB&B、カッシーナ、ザノッタなど、グラフィックデザインや写真の歴史の1ページとなるものも多い。

けれども最近は本当にその輝きを失い、宣伝広告的に作っている企業も少なくない。かつて、たった1枚のビジュアルとして絞られた広告はとても強いブランディングだったのだ。

「20年、30年、40年経っても、家具も広告も今見ても古くない。デザインとは何かを語りかけてくる。それがタイムレスということ」とチッテリオはこの展覧会についてコメントしている。

インスタでいくら星の数ほどビジュアルを見せられても、これほど印象に残るものは少ない。改めてそう思った。

家具を小物や内装で演出し、スタイリングし、見せる手法はどこでもやっている。けれどもこのようにファンタジー、イマジネーション、インスピレーションを呼び込むビジュアルと共に、家具を伝える。それは世界でもイタリアが特に秀でたコミュニケーションの手法なのかもしれない。

だから私は1枚のビジュアル哲学に込められた広告が好き。宣伝チラシではない、本質的な何かを伝えるこういうビジュアルが。

家具をたくさん見せていたわけではない。でもとてもフレックスフォルムのことを深く理解した。そんな思いで会場を後にした。

コラム=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)
Text=Miki Homma(journalist)

[以下はフレックスフォルムのプレスリリースより抜粋]

本展では、ブランドのアイデンティティとその際立つ個性を築き上げてきたシグニチャーフォトと製品を通してそのストーリーが語られています。80年代から現代に至るまでの時系列に沿い、バックライト付きの大型パネルに再現された広告キャンペーン写真の数々が、来場者たちをFrexformのタイムレスなスタイルを印象づける旅へと誘います。

2000年代までのFlexformの世界は、ナタリア・コルベッタのアートディレクションのもと、ガブリエレ・バジリコをはじめ、ジャンニ・ベレーニョ・ガルディン、ジョヴァンニ・ガステル、ジャン・パオロ・バルビエリ、マリア・ヴィットリア・バックハウス、マリオ・チャンピ、そしてファブリッツィオ・フェッリといった写真界の巨匠たちによる徹底したモノクロ写真の鋭い表現力で物語られています。Flexformに宿る絶妙なエレガンスを描写したそれらの写真は、オリジナリティと迫力から人々の記憶に深く刻まれ、Flexformを大胆で型破りなブランドストーリーを発信できる企業として位置づけています。

そして近年、アートディレクションの手綱をクリストフ・ラドルに託し、今最も注目を集める写真家と共に、Flexformのコミュニケーションの歴史に新たな一章を刻んでいます。この新広告キャンペーンにレンズを向けるのは、ピエールパオロ・フェッラーリの独創的でアイロニカルな視点です。これまでのモノクロの世界から、フェッラーリ氏特有のヴィヴィッドな色彩の世界へとシフトし、独特な個性を放つ女性が織り成す謎めいた物語が描かれています。本展は、Flexformのコミュニケーションの進化と、物語という次元にこだわりながら新たなコラボレーションで大きく革新していく弊社の姿勢を見事に映し出しています。

Flexformを語る時、このブランドのヘリテージが、ファミリービジネス、50年にも渡りそのアイデンティティとノウハウを共に継承してきたアントニオ・チッテリオというデザイナーとの深いコラボレーション、製品の本質的なクオリティ、そして卓越した職人技というコンセプトと密接に結びついたものであることを忘れることはできません。

ポートレートデザイン展の動画がこちらから見れます。

写真提供=フレックスフォルム本社広報部
Photos=FLEXFROM Pressrelease

●前回のコラム「リアルリビング&インテリア制作中」はこちら
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