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Days & Stories

「アンビエンテ」を知っていますか?

2022.05.30 キッチンジャーナリスト 本間美紀

●フランクフルトらしい空間を貸し切って

とはいえ、アンビエンテチームの審査は厳しい。
デザインがよくストーリーがあるだけではだめで、市場で品質と価格的に通用するもの、それなりの量産ができるものなのなど、作る側も売る側も商業的に成り立つか、ビジネス面での効果もシビアに求められていた。

そうでなければ、お祭りで終わってしまうからだ。

ビジネスが長く続いて、はじめて作り手も買い手も幸せになれる。
彼女流のサステナブル(持続可能)なディレクションで、アンビエンテという見本市の方向性にはドイツ気質と、ディレクター、“ニコレット・ナウマン”の哲学が現れていた。

ナウマンさんはマリエンプラッツあたりの小さなライフスタイルショップを愛し、発酵食やニューノルディックスタイルなど、フランクフルトの最新のレストランをたくさん知っていた。

そして会期中のジャーナリストパーティは、フランクフルトという街をよく知ってもらおうと、いつもサプライズな場所を用意していた。


ある年はレーマー広場の歴史を重ねた市庁舎の厳かな空間で、ある年は自動車博物館でドイツ車に囲まれて、ある年は巨大な恐竜の骨の模型の中、ゼンケンベルグ自然博物館で食事をした。2020年はフランクフルトの知性ともいえるゲーテ大学の講堂で。

文化的な場所を貸し切って、ケータリングのディナーを用意して、世界中のジャーナリストと話す時間をくれた。招待ジャーナリストの一部は「ファミリープレス」と呼ばれ、毎年、定点観測のように取材に呼ばれた。私もいつの間にか、その一人に加わっていた。


コロナ禍直後にドイツのナウマンさんにオンラインインタビューをしたとき、「もう時代は変わる、この機会に退職する」と、自分の口から私に伝えてくれた。63歳だった。
彼女ほど独自の視点と情熱、信念を持った見本市ディレクターはこの先、出てくるのだろうか。寂しい気持ちになりながら、退職を祝うビデオメッセージを送った。

2023年2月にはリアルのアンビエンテが再開されるというニュースが入ってきた。
そんなアンビエンテの姉妹見本市である「インテリアライフスタイル展」も6月1日から3年ぶりに東京で開催される。

(私も6月1日、2日 12時30分ー13時15分 「アンビエンテ」の解説で登壇しますのでお待ちしています)

コラム=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)Text=Miki Homma(journalist)

●前回のコラム「キッチンで響く言葉は」はこちら
●次回のコラムはこちら

【本間美紀のコラム/バックナンバーはこちら】

●今見ても素敵なヒントがいっぱい。
タイムレスなアンビエンテの過去記事はこちらから

アンビエンテ2023の問い合わせ先
メッセフランクフルト・ジャパン
Tel: 03-3262-8453
info@japan.messefrankfurt.com
https://www.jp.messefrankfurt.com/tokyo/ja.html

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