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Days & Stories

「アンビエンテ」を知っていますか?
2022.05.30 キッチンジャーナリスト 本間美紀

【本間美紀のコラム 2022/05/30】

●「アンビエンテ」というドイツの見本市

ミラノに行く直前のタイミングだけれど、ドイツ・フランクフルトについて書きたくなってしまった。コロナ禍前、2月はたいてい日本にいなかった。毎年その頃はドイツ・フランクフルトで行われる「アンビエンテ」に行っていたからだ。

デザインやインテリア、暮らし関係の見本市といえば、イタリアの「ミラノサローネ国際家具見本市」があまりにも有名だけど、私はこのドイツの「アンビエンテ国際消費財見本市」も同じくらい好きな見本市。どちらの見本市も通うように取材に飛んで、20年近くなる。


面白い見本市の裏には必ずキーパーソンがいる。
アンビエンテでは前ディレクターのニコレット・ナウマンさんがその人だった。
真っ赤に染めたボブヘアの前髪を、眉毛の上で切り揃え、建築的なアクセサリーや変わったフォルムの服を着ていた。ファッションの世界の装いとはちょっと違うモダンさがある。

フランクフルトメッセの中でもひときわ異彩を放つ女性だった。プレスカンファレンスやパーティでは、彼女が登場すれば会場は静まり返り、また盛り上がる。

派手な女性のように見えるが、実はナウマンさんが愛していたのは、オーナーの顔が見える小さなライフスタイルショップ、個性あるデザイナー、スタイルのある店、頑固な老舗専門店。

大手EC向けボリュームゾーンの商材も出展はしているが、彼女が世界中から出展を誘っていた小さな企業、クラフトマン、デザイナーがとても素敵だったのだ。

レベルは高いが、ハイブランドとは違う適正規模の企業。エシカルやウェルフェアなどソーシャルなテーマを事業にしたブランド、中規模生産ができるモダンクラフトなど。個人事業ともちがう、量産型企業とは違う、ほどよいサイズ感のブランドやメーカー、作り手が集まっていた。

デンマークの姉妹がつくるエコレザーのダストボックスやデスクマット。
作家的でもあるが、適度な量産ができるベルリンのデザイナーの食器。
分厚いウールフェルトを幾何学的に切り出したカラフルなコースターやテーブルマット。
障害を持つクラフトマンの技能を起用した、直線的な木の生活道具。
小さくて、繊細で、素敵なものにたくさん出会えたのが「アンビエンテ」だ。

日本からも「タイム&スタイル」の吉田龍太郎さんによる「ジャパンスタイル」という企画も続いている。

アッシュコンセプトやマスキングテープのMTなど、この見本市から世界市場に羽ばたいていった日本の企業は少なくない。ナウマンさんはほぼ毎年来日し、日本の素敵なデザイナーや企業も探し歩いていた。

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