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フォーリサローネと日本企業の今後

2019.05.29 宮澤明洋 リアルキッチン&インテリア 担当編集&総合ディレクター

●その出展はプロダクツとして還ってくるか?

VENTURA CENTRALEでは、また別の興味深い展示もありました。実はここもある日本企業です。

黒と白で構成された集積回路のような壁面作品。タイトルは「Pianissimo Fortissimo」。そう、ピアノです。写真をよ〜く見てみると、下のほうに鍵盤があるのがわかると思います。普通の鍵盤とは違って垂直になっているので弾きにくそうですが(笑)、音も出ます。

ただ、高音部(あるいは低音部)にいけばいくほど、鍵盤の形や色が曖昧になってきます。実際、端の方の鍵盤は音を出すための鍵盤ではなく、鍵盤の形をした木材です。これは絵画のような作品と楽器の「境界」を曖昧にするような作為的な仕掛けだそうです。この「境界」という言葉、今年のサローネではよく耳にした言葉でした。例えば、今はリビングやキッチン、バスルームやベッドルームを隔てる「境界」がどんどん消滅する傾向にある……という風に。

このブースの出展者は楽器メーカーのヤマハなのですが、この場合は、楽器と芸術作品、あるいは家具との「境界」が曖昧になることで、今までにない形が生まれる可能性を示唆しています。シンセサイザーに代表されるキーボードの世界では「音源」の進化がめざましく、今ではパソコンやスマホのアプリでもリアルな楽器の音が簡単に再現できるようになりました。この作品でもハンマーのような形状の部分がありますが、実際に弦をハンマーが叩いて音をだしているわけではありません。デジタルの「音源」があるので、鍵盤楽器として成立させるためには鍵盤があればいいのです。AIだったらどんな「ピアノ」をデザインするのでしょう?

Photo Claudio Grassi

余談ですが、アコースティック楽器の世界ではサイレント化/エレクトリック化が進んでいます。当初は自宅での練習用途としての側面に注目が集まっていましたが、今やデザインや音も深化して、プロが普通にステージでも演奏したりします。

ヤマハ エレクトリックバイオリン『YEV』。

サローネには11年ぶりの参加となるヤマハでしたが、2005年から2008年までの4年間の出展で「世界中から訪れる人々の反応を肌で感じることで、デザイン哲学を深め、ヤマハデザインのアイデンティティをより確かなものにしてきた」と言います。このバイオリンを見ると、そんな言葉もまんざら嘘ではないな、と思わずにはいられません。

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