
●デザインの空気感をつかみにいく
門田:オーダーキッチンは完成品ではありませんから、依頼主のご要望次第でどういうものができるかが決まります。予算は調整できます。たとえばワークトップの素材や扉材など、色柄の違いで値段が変わらない時、より建築のイメージや依頼主の好みに適ったトーンを、ずばり提案してさしあげれば、予算内でより美しいものができる。このセンスがオーダーキッチンの大切な要素なんです。
―このショールームがあるビルも建築家ユニットのアトリエワンの設計ですね。
門田:建築家の空間にはキッチンを設置してみないとわからないし、最上階は傾斜してトップライトがあり、ロフトような中2階がある。建築家住宅を好む依頼主が、キッチンをイメージしやすい空間です。
―オーダーキッチンはスタッフのセンスや感度の高さ、状況への理解力が、仕上がりを左右しますね。
門田:その通りなんです。小さい会社で大変ですけど、ミラノサローネに社員も参加するようになりました。一流の人が集まる、デザインを知る人が集まる。キッチンデザインを見に行くというより、こういう方が何を見て、どんなことを考えているか、その空気感をつかみに行くんです。さらにユーザーである依頼主は海外に駐在していた、留学していた、帰国子女の方など、国内外でいろんなものを見ている。ホテルやレストランでの経験値も高い。キッチンの依頼が、家事や収納とは違ったところからの話から始まることもあります。
門田:オーダーキッチンは個性的な物を作りたい人向けと誤解されがちですが、見えないところで調和する努力も大きいです。既成キッチンは幅60センチをベースに15センチ刻みで幅を考えますが、そうじゃないサイズの扉もつくる。そして収納の使い勝手としては、きちんと辻褄があっていて、生活に響かない。これがオーダーの大切な仕事の一つです。