INTERIOR
Visiting Kartell Museo

モダン家具のブランドミュージアムを訪ねて

2023.07.27 キッチンジャーナリスト 本間美紀

⚫︎カラー、ゴールド、そして透明という新世界へ

カルテルの歴史について触れているとキリがない。エリーザさんも話が止まらない。そこでやはりカルテルの中でも、もっともエポックメイキングだった「透明な家具」への挑戦について聞いてみた。

イタリアの伝統的な家具メーカーの木工や革の技術では実現できないフォルムやカラー、そしてメタリックなど、新しい加工技術にも次々と挑むカルテル。

1999年、カルテルはついに100%透明な椅子「ラ・マリー」をフィリップ・スタルクと発表する。時はまさにミレニアムをまたぐタイミングだった。その後、写真のように透明な家具のファミリーは続々と増えていった。カルテルの大ヒット商品の一つとも言える。

家具の存在感をなくす。景色や建築の景観を遮らない。浮遊感がある。あらゆる要素を含んだ透明な家具は、私にとっても衝撃的なプロダクトだった。


これも当時の最新素材だった、抜群の強度と透明度を持つ樹脂「ポリカボーネート」の登場があってこそ生まれた。その後、吉岡徳仁の照明「プラネット」やフェルッチョ・ラビアーニの「ブルジー」(写真下)など、カルテルの新時代につながっていく。いまだに透明な家具はカルテル以上のものがない。

樹脂はもちろんカーボン、テクニカルファブリックなど、カルテルは毎年、世界各国の素材メーカーからエンジニアードマテリアルを提案されるそうで、新素材の情報アーカイブを豊富に持つ家具ブランドはカルテルだけだろう。石油由来の素材・プラスチックは現代ではやや分が悪い印象を持たれる時もある。だからこそカルテルは研究をやめない。

そして特に最近はサステナブル素材の活用に力を入れている。

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