INTERIOR
Visiting Kartell Museo

モダン家具のブランドミュージアムを訪ねて

2023.07.27 キッチンジャーナリスト 本間美紀

⚫︎マテリアルのバラエティ&アップデートが注目の的

実はこの透明シリーズの椅子も2023年の今は、同じように見えて素材がセルロース系のサステナブル樹脂にアップデートされている。それを話すと多くの人が驚く。

「強度やデザイン、耐久性を保ちながらの材料チェンジは非常に苦労を要した。そこに気づいてくれる人がどれだけいるかわからないけれど、それがカルテルの使命」とは社長のクラウディオの言葉だ。

サステナブル素材の透明樹脂に変わったルイ・ゴースト。2022年のミラノサローネ会場で。

そのコンセプトは2023年ミラノサローネ見本市会場のカルテルブースでも、存分に表現されていた。

天然石の美しい表情を再現したテーブル「フォー」も、希少な資源である天然石を節約し、その美的価値観だけを取り入れている。細かい網目のシェルチェア「スマトリック」は複雑な工程のインジェクション成形で作られ、むやみにコピー商品がつくれないほど精巧で美しい。

布張りのチェア「エレガンツァ」はミッソーニの鮮やかな生地を張り、ファッショナブルに仕上げている。バルーンのような輝く照明「フライ」は、カルテルの樹脂成形技術でガラスに遜色ない丸みと輝き、透明感を実現している。ラグなどのテキスタイル製品やプライウッド(合板)のチェアなど、素材の幅は広がるばかり。

そして注目の最新技術、AIを取り入れたプロダクトは「A.I.チェア」として、2019年にすでに発表されている。人工知能を使ってフィリップ・スタルクの過去のデザインを最適化したチェアデザインで、今やスツールやコンソールなどファミリーアイテムまで登場し、発展している。

カルテルの家具を見るとき、時代の最先端技術、ファッショナブルな感覚、プロダクトを人格化するエモーションは自然に出てくるワードである。それがすべてのプロダクトに貫かれ、ブレがないことに驚く。

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