
●空気をデザインする、たたずまいを生み出す
清水「長谷川さんはいまどんなお仕事をしているんですか?」
長谷川「有形、無形、すべてを使い、五感に訴えるような空気をデザインすることですね。インテリアやインスタレーションそのものだけじゃないんですよ。光と音の演出をして、その場の体験をつくります。私がつくるのは何十年もいる空間ではないので、どんな空気や印象をつくるかが重要なんです」
清水「読後感とでもいうのでしょうか。そういう意味では、僕もアムスタイルではキッチンというより、空間の中での“たたずまい”を作っています。あくまでも与えられた“場”の中でのかたち、それが一番よく見えるバランスを探します。そのために遠目で見るプロポーションとか、素材の厚みや薄さが出す“意味”を考えます」
長谷川「訪れる人の人生の時間の一部になる。そのために常識を超えることもあります。厳寒の冬の善光寺のプロデュースを依頼された時、私はここに宗教も何もかも超えて、極楽浄土を表現したいと思いました。まず自分は何をしたいか、伝えたいか。どんな空気をつくりたいか。その手段として光があり、グラフィックがあり、色があり、素材がある。そして、それらを使って物語を紡いでいきます」
長谷川「参道からの光に導かれて歩くと、蓮の花のイルミネーションに包まれます。蕾から開花してゆくんです」
清水「映像を使ったプロジェクションマッピングなんですか?」
長谷川「いいえ、日本伝統技法をモチーフにして、光の切り絵として投影してるんですよ。柄を何枚か重ねて入れ替えることで動いたり、色が変わったり。どうしてもデジタルにはできない、影と光のリアルな質感がほしくて」
清水「職人的というか、人が一見わからないことに手間ひまかけている。そんなところ僕と似ていますね」
長谷川「小さな感動、ずーっと続く感動」
【amstyle dream note】第1回目はこちら
01 キッチンをめぐる少し未来のお話〜ロボットクリエイター・高橋智隆さん
https://realkitchen-interior.com/sp-issue/18103