【THE ORDER KITCHEN02 / KOBESTYLE】
「ザ・オーダーキッチン」の第2回目です。住まいやキッチンに意識が高い街として知られる神戸。私も昨年から何度か伺うようになって、日本の中でも大好きな街の一つになりました。そんな神戸でオーダーキッチンといえば、KOBESTYLEの名前が真っ先に上がります。2019年4月から社長に就任した山本由紀さんの意欲を伺いました。キッチンの現場を愛し、足を運ぶことを厭わないがんばり屋さんです。(インタビュー/本間美紀)
─KOBESTYLEにはどんな依頼主が多いのでしょうか?
「KOBESTYLEの場合、個性的なデザインが欲しいとか、エッジが効いたものが欲しいというお客様がそんなに多いわけではないんです。むしろ多いのは自分の中にテーマがあって、それをかたちにしてほしいという方です。年齢も価格帯もバラバラですね。お若い方で業者さんの提案するキッチンに納得がいかず、ちょっと工夫をしたい人もいれば、それまでの人生でブランド品も高級品もさんざん買ったという人が、オーダーメイドにたどり着く場合もあります。内訳としては設計士から直接の依頼が80%、工務店が10%、ウェブサイトや本を見て依頼主が直接訪ねていらっしゃる場合が10%ほどでしょうか」
─キッチンの駆け込み寺みたいですね!(笑)
「私たちも最初の打ち合わせはちょっと緊張します。そしてなぜオーダーメイドなのかというところを考えます。というのは、KOBESTYLEではすべてオーダーすることが良いことではないと考えるからです。オーダーメイドは一からのデザインですから、時間も手間もかかるし、予算も最初は見えにくい。お話の内容によっては、プロダクトキッチンで解決できる場合もあります。その場合はそうした方がいいのでは?と正直にお伝えします。これは後でお話ししますが、わが社では依頼に対していろいろな“お答え”を用意しています」
─初対面の依頼主は何から打ち合わせされるんですか?
「実は一番大切で、みなさんとの距離がぐっと近くなれる情報は“どこでKOBESTYLEを知ったか”なんです。ブログを読んだとか、またお客さんのご友人だったりすることもあって“なあんだ、それ先に教えて〜”って思うこともあります(笑)。リアルキッチン&インテリアや本間さんの本を読んでという方も多いですよ。よくものを知っている人、内容のある話を聞き慣れている人が多くて、ワードチョイスはかなり気を配ります。特にここ数年は、質感、色合い、イメージなどから始まるコンサルティングがとても多くて、私たちもアパレルやレストランなど、たくさんのものを見て、専門用語ではない質感の言葉を増やすようにしています」
「そして、こうした通常のコンサルティング以上に、ある種の物語が込められたプランをご提案するのがKOBESTYLEらしさかもしれません。たとえばこのショールームにあるキッチン。ただの突き板の木目を生かしたキッチンですよと話せば質感の話はできます。でも本当の話は実はこれ、地元・神戸大学の構内に生えていた榎(えのき)を使ったキッチンなんです。伐採されることになり、それをなんとか生かしたいという大学関係者の話が持ち込まれました。そこでこの榎を製材してショールームのメインモデルに使ったんです。KOBESTYLEは地元・神戸を拠点にしているし、こういったかたちでうちの姿勢も見せられるかなと。みなさん、本当に喜んでくれて、結果、応援もしてくださる。KOBESTYLEだからできる物語を込めたキッチンです」