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Milano moves to 2021

ミラノサローネ─未来への延期 前編
2020.04.01 キッチンジャーナリスト 本間美紀

●“幻のサローネ”が未来に託していたものとは?

プレスカンファレンスミでミラノサローネ代表でありカルテル社長のクラウディオ・ルーティ氏が、公式記者発表で強調していたのが「サスティナビリティ」です。

「2020年のミラノサローネは、家具企業の倫理的で高潔な取り組みにフォーカスを当てます。今日必要なのは、グローバルに持続可能なソリューションの探索をサポートするデザインに対する倫理的アプローチです。新しい世代の消費者は生活空間や仕事場において今まで以上に本質的な価値に興味を持つようになりました。多くの企業による環境と人々のウェルビーイング(幸福)に配慮した製品とシステムへの投資が多く見られます」

プレス発表時はすでに中国からの出国が禁止され、コンファレンスに参加予定だった中国主要メディアが寄せたビデオメッセージが流されました。

その結果何が起こるのでしょうか?私なりに分析してみました。

1 インテリアは大量生産からカスタムメイドに

ご存知の通り、アパレル同様、インテリアの業界も、「もの」もデザインも情報も飽和状態が近づいていました。作っても売り切れない。使い尽くせない。デザインやコンセプトを発表しても伝えきれない。そしてパワーとエネルギー、ビジネスが消えていく。そんな状況を迎える前にできることはなにか? そのためにカスタマイズ、オーダーメイドなど無駄のない「注文生産」の仕組みが、インテリアの主流になってくるだろうと予想されます。木材、革、石、天然素材も枯渇しつつある中、求められないデザインや家具に資源を投入するべきなのか。買い手の意識も求められます。

2 デザイン重視からエシカルプラン尊重に

超のつくようなトップブランド各社の様子を見ると、かつての流行だったスターデザイナーによる新作合戦に終わりを告げています。環境活動家や研究者とのコラボワークが、これからの価値を生み出すという方向性を感じました。ある有名テキスタイルブランドは、工業デザイナーではなくエシカルプランナーとの新企画を予定していました。また必要最小限で最大の効果を生むジェネレーティブデザインという言葉も2019年の会場でちらほら耳にしました。それに伴い、盛り上がってきそうなのがマテリアルのジャンル。新規な形というよりも、すでにあるデザインでも素材を変えることで、新たな価値観を生むということで、欧州ではマテリアルメーカーのデザインブランド化が盛んです。

2019年、カルテル社のトライアル。フィリップ・スタルクの過去のデザインをAIが知覚し、ジェネリックデザインに落とし込んで生まれたチェアA.I.。デザイナーの魂は残しながら、材料や強度の最適化を人工知能が行った画期的な製品。スターデザイナーの時代からサスティナビリティへの移行を予感させました。カルテルは2020年も多くの提案を準備していたそうです。

後編では、今後の市場を読み解く、幻のホール構成をレポートします。「なくなったこと」ではなく、これは2021年のホールへの布石となります。1年かけ、世界の急激な変化による新しい価値観がどう取り入れられていくのか。今こそ、知っておきたい必読の方向性です。

後編に続く

【参考】難しいカタカナ語、本記事の文脈での使い方を私なりにかみくだいてみました。

サスティナリビティ(持続可能な)=サスティナビリティは持続可能と直訳されますが、私は「長く続けられて、めぐりまわり、わかちあえるもの」と解釈しています。ものごとには良い時も悪い時もありますが、それを長い目で見て均して、醸していけること。

エシカル(倫理的な)=プロジェクトに関わる人すべてが、等しい分配を受けられることを前提にしたビジネスモデル。そのためにも関わる人すべてが事業に責任感と愛情をもち、成果をだす努力も求められる。

次のページでは時間があるときこそ読んでおきたい、キーワードを知る記事をアーカイブからご紹介します。

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