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Days & Stories

予想図通りにはいかない

2022.05.16 キッチン&インテリアジャーナリスト 本間美紀

●照明デザイナーではなくエディターである理由

「どうして照明デザイナーではなく、ライティングエディターという肩書きなのですか」。
光は感じ方の個人差や環境、天候などの影響が大きく、「絶対」というものがない。照明の形や位置、光の当て方のデザインだけでは伝わらない。

その予想図をさまざまな表現で伝えなければならない。言葉だったり、シミュレーションだったり、図面だったり、資料だったり。まさにその作業は‘’編集‘’に近い。光の予想図はあらゆる手段を使って表現する。だからエディター、と谷田さん。

それを信じて理解してくれる人だけが、谷田さんの提案する光にたどり着くのだという。そのためにも谷田さんはこの場所が必要だったのだ。


その話に私はとても共感した。

文章、デザイン、イラストやアート、グラフィック、音楽、プロダクト、、、、、クリエイティブワークに正解はない。
特に一般の会社やクリエティブに知見が少ない不特定多数に向けた仕事の現場では、完成した時の‘’体感‘’や‘’効果‘’を正確に伝えることは難しい。

依頼主だって判断できないこともあるだろうし、クリエイター本人だって、できてみなければわからないことがある。
光の予想図をどう伝えるか。谷田さんも光の仕事について30年。さまざまな挫折もあって「ライト&ディッシィズ ラボ」にたどり着いたのだろう。

photo=Taro Ohta

私も「リアルキッチン&インテリア」を作っている時は、どんな本になるのか、ふと深い森の中に迷い込むことがある。
台割という精緻な構成の中に内容を組み込んでいるのだけれど、表現したい思いのふくらみ方や、感じ方が違ってきたらどうしよう、もっと書きたくなったらどうしよう。気持ちが萎んでしまったらどうしよう。読者と思いがずれてしまったら?

行きつ戻りつしながら、その中で一番伝えたいベストはなんなのだろう。
パース通り、予想図通り、CG通り、プレゼン通り、工程表通り。そうであることが‘’よし‘’とされる時代。
ふと、自分はそんな予想図を上手に裏切りたいと、思うことが時々あることを思い出した。

 

コラム=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)

●前回のコラム「芽吹くような5月のはじまり」はこちら
●次回のコラム「キッチンで響く言葉は」はこちら

【本間美紀のコラム/バックナンバーはこちら】

 

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