
【本間美紀のコラム 2022/05/16】
「料理の色や食卓の雰囲気って光で本当に変わるんですよ」というのはライティングエディターの谷田宏江さんは話す。
東京・門前仲町の「ライト&ディッシィズ ラボ」という、谷田さんの新しいラボに呼ばれて、試食も兼ねたお披露目に呼ばれた時のことだ。
長年、建築照明メーカーでレストランや商業施設の照明計画を手掛けてきた谷田さんは、バブル時代の華やかなナイトスポットの照明の現場をたくさん経験してきた。
その中でも気に入っていた仕事はオーナー個人の思いが出たレストランの照明で、どんな料理を出したいか、食卓の雰囲気を生み出したいかで、光の質を調整してきたのだという。
自身も料理好きで、ついにはカウンターだけの飲食店「たにたや」を開業し、照明計画の仕事をしながら、デザイン関係者が集まる小さな店をつくって、毎晩盛況だった。
そんな谷田さんが今回オープンした「ライト&ディッシィズ ラボ」は鉄工場の跡地を利用してつくった、用途を限らない自由な食と光のスペースだ。55㎡の広すぎず、狭すぎない空間。光と人の距離を体感できる天井高4.5mのがらんとした空間。その奥にキッチンがある。
不定期に「たにたや」も続けながら、新規の照明のトライアルをしたり、料理家のポップアップレストランや販売イベントを開いたりする自由なスペースとして活用していくのだという。
料理する手元の光と、食事をする時の光の役割は違うので、調理側のカウンター下には明るく鮮やかな照明が仕込んであるが、その眩しさは食べる側には伝わらない。そんな工夫がしてある。
特にレストランなど料理のプロに光を学びにきてほしいと話す。食事をしながら、料理の写真を撮るのが一般的になった時代、光は視覚ともに、料理の印象を大きく変える。その大切さを知ってほしいという。
「どうして照明デザイナーではなく、ライティングエディターという肩書きなのですか」。そんな質問を谷田さんにしてみた。