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ambiente 2023/01
大きく変わったアンビエンテ 前編
パッケージ化された船もあれば、カスタマイズされたオーナー艇を展示しているブランドもあり、一通り見て、まるで住宅展示場を見ているような気分になった。
そんな中、一隻のオーナー艇が心に残った。外装は軍艦のようなミリタリーグレーで、船底の方だけ錆びたような赤に塗装されている。担当者に聞くとオーナーがこの赤のニュアンスにこだわり、特別に調色したのだという。
内装は無垢材で壁や床が仕立てられ、ウッドデッキ風。ソファは柔らかな雰囲気の耐水性の布張り。操縦席に小さなムーミンが守り神のように飾られている。天井の際(きわ)や窓辺など、あちこちに釣竿をしまう細長い場所があり、うまいことスペースを見つけるなあ、と感心してしまう。デッキにはスウィングチェアが吊られている。凪の日にはここで海を眺めるのだろうか。
決して派手な船ではなかったが、ほっとするような雰囲気がある。船からオーナーの人柄がリアルに伝わってきた。北欧製の船だったが、メーカーの担当者も、「ここまで自分らしくカスタマイズしてくれると、メーカー冥利に尽きる」と話していた。
陸(おか)の家以上に、オーナーと一体になる家が船。人馬一体という言葉を思い出した。
コラム=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)
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