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カンバセーション・ピース

2024.02.13 キッチンジャーナリスト本間美紀

⚫︎11%、そしてカンバセーション・ピースが意味するものは

素材説明の展示を指して、「オランダに下水から使用済みのトイレットペーパーのセルロース繊維だけを組み上げて再生させる企業がある。その会社との共同プロジェクトなんだ。そのセルロースを基材に陶土をつくっているのがこの食器」
「えっ? トイレで使ったトイレットペーパー?!」思わず聞き返した。

「このセルロース繊維の中の11%には糞便、ホルモン、医薬品の残留物、およびミネラルが微量に含まれているんだ。この残留物が焼結されてカプセル化されたのが陶器の表面に見えている黒い粒」

黒い粒に見えていたのは人体から排出される微量のカルシウムカーボネート、銅、亜鉛、鉄、アルミニウムなのだという。なんという人体の不思議、、、、というより、食器にして大丈夫なの?と思わず聞く。

「陶器は1250℃で焼成されるから、衛生的で安全。有害な細菌のほとんどは約130℃で排除されます。でも素材の由来に対する抵抗感まで排除されるのか、自分はそれをこの陶器で問うているんです」

「私はちょっと自信ないなあ、、、、これを使って食事したことある?」

「もちろんさ」と彼。そして「ほら、こうやって今の僕たちみたいに会話が始まるでしょ?そして廃棄物の問題にみんなが意識を向ける。これがカンバセーションピース(会話のかけら)ということだよ」

11%、カンバセーションピース、、、すべてのキーワードがつながる。

「人体が消化し忘れた食べ物は、また元に戻ってきて、食器の中で不滅に生き続けているんだよ」。彼は食事をのせた写真も見せてくれた。

デザインとはものの形を作ることではない。こういう問いかけができること。
山のように陶器が並ぶ会場で、思わず魅せられたこの食器「11%」、たった15分立ち寄っただけなのに、私の心に深く何かを残した。

再生セルロース陶土の食器プロジェクト「11%」の詳細はプンケットさんのサイトから。
www.nicholasplunkett.de

コラム=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)
Text=Miki Homma(journalist)

「リアルキッチン&インテリアseason 12」
小学館刊 著/本間美紀
https://www.shogakukan.co.jp/books/09104266

●前回のコラム「一夜の復活」はこちら
●次回のコラム「    」はこちら

【本間美紀のコラム/バックナンバーはこちら】

 

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