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MilanoSalone2019 05

人工知能が夢見る新しい家具の形
2019.05.17 リアルキッチン&インテリア ディレクター 宮澤明洋

●ジェネレーティブ デザインとはなにか?

この Kartell「A.I.シリーズ」は、AI(人工知能)が考案した世界で初めての家具(イス)です。

ただ、AI と聞いても、なんだかあまりにも大まかすぎて、具体的にどこが凄いのか、イメージがわかないかもしれません。

実はここで AI と呼ばれるものの核になっているのは、オートデスク社による先進的なジェネレーティブ デザイン アルゴリズム(*)です。 *アルゴリズム=演算の方法

うわ、難しそう……。そう思った方もいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫。わかりやすく、そしてかいつまんで説明しましょう。ちなみに、フィリップ・スタルク氏もご自身はコンピューターは使わないそうですよ(もっともその理由は『(クリエイティブなフィールドでは)どんなコンピューターよりも、私の思考速度の方が速いから』だそうですが)。

まず、ジェネレーティブ デザインという言葉は、ここ数年、インフラや製造業の分野でよく聞かれるようになったキーワードで、一般的には、人間が様々な仕様をインプットするだけで、コンピューターが自動でデザインをしてくれる技術を意味します。Generative=生成するデザイン、あるいは先ほどのオートデスク社によれば、「自然の進化するアプローチを模倣してデザインを行うテクノロジー」と定義され、実際にゼネラルモーターズやエアバスなどがこのテクノロジーを活用して自動車や航空機の部品を作っています。

自動車も航空機も重量や強度が大変重要です。重量が変わればそれは燃費に直結してきますし、強度は安全性に関わります。オートデスク社のオンライン パブリケーションによれば、ジェネレーティブ デザインの導入により、GMではシートベルト ブラケット(シートベルトのバックルをシートや床に固定するためのパーツ)の40%の軽量化と20%の強化に成功し、エアバスではキャビンを分割するパーティションの重量を従来の半分にし、全ての安全要件を満たしつつ何億円にも相当する燃料コストが削減可能になったと紹介されています。

新作発表会後半に登壇したオートデスク社のマーク・デービス未来デザイン部シニアディレクター(中央)。

では、従来の人間の脳によるデザインとジェネレーティブ デザインは何が違うのでしょうか?

従来の方法では、デザイナーやエンジニアが、例えば「既存の構造をどのように変更したら一定の強度を維持したまま軽量化が図れるか」という問題について、過去の経験やふとひらめいたアイデアをもとにデザイン・設計が行なわれます。

一方、ジェネレーティブ デザインにおいては、同じ問題について「問題の解決法はわからないけれども、目標はわかっている」とコンピューターに問いかけるのです。この場合の「目標」とは、実現するべき設計上の負荷や取り付け位置、あるいは安全率、製造技術などの「規定」や「設定」のことで、これらをコンピューターにインプットすると、 AI は、製造技術、要求性能などに応じた何百通りのデザインを人間に提示します。その中からこのプロジェクトにとってどれが最も適したものかを決めるわけです。

つまり、人間の脳によるデザインには、それがどんなに優れたものであろうと、その発想のプロセスにおいて様々なバイアスや無意識の規制がかかっています。レオナルド・ダ・ヴィンチのような万能の天才の場合は違うかもしれませんが、そんなレオナルドでさえ、時代的な制約(アイデアはあっても技術的に実現できない!)や肉体的な限界(アイデアの数には限りがある)を避けることはできません。

それに対して AI によるジェネレーティブ デザインは、様々なバイアスや無意識の規制とは無縁ですし、クラウドのパワーとスピードがありますから、思ってもみないような新しい問題解決の仕方をいくつも見つける可能性が高いのです。

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