2026年、ミーレがミラノ・エウロクチーナ会場で示したのは、家電単体の進化ではなく、キッチンそのものが使う人に寄り添い、学び、変化していく未来像でした。テーマは「Designed to Move with You」。日々の生活リズム、限られた住空間、調理経験や好みに応じて、キッチンの機能が柔軟に反応するという考え方です。

ここではまだ日本に上陸していないドイツ本国の最先端の新製品を紹介し、今後、未来のキッチンに何が起こるかをお伝えしたいと思います。日本でも人気のミーレですが、ドイツではかなり先を見据えた研究が進み、実用化されているのです。

ミーレが今回大きく打ち出したのは、やはりAI。AI搭載のバーチャルアシスタント「CulinaryCoach(カリナリーコーチ)」です。ミーレの専用アプリ内で、調理に関する質問に答え、ユーザーの好みや経験値に合わせた提案を行い、対応する機器へ最適な設定を送り、「料理のコツや好み」を自然に反映させていきます。対話するオーブン、その家族の好みに合わせて育っていくオーブンとでもいうのでしょうか。

まずは「H7860BP/x」シリーズの高機能オーブンに対応し、今後は対応機種やカテゴリーの拡大も予定されています。レシピを探し、火加減を考え、機器を設定するという一連の行為が、アプリと家電の連携によってつながっていく予定です。Wi-Fi接続のスマホ操作からAIが調理をサポートする家電へと劇的な進化です。この頭脳の部分がミーレの今回の最大のポイントだったと言えます。

さらに、「KM 8000 IHクッキングヒーター」と専用鍋「M Senseクックウェア」はBluetoothでつながり、温度センサーによって火力を自動制御し、焦げつきや吹きこぼれを防ぎます。これまで勘や経験に頼っていた部分をセンサーと家電が支えることで、鍋とIHが互いに対話し、調理はより正確で失敗の少ないものになるのです。

日本でも展開が始まっている高性能のビルトイン冷蔵庫もさまざまな食材に合わせた温度帯を備えた庫内で、ラインナップを増やしていました。

そしてIFA 2025で世界初披露された新しいスチームドロワーが注目を集めました。スチームドロワーは高さわずか14cmの引き出し型スチーム調理機器で、繊細な温度管理で食材を蒸しあげます。

健康的なスチーム調理を、都市型住空間にも取り入れやすくする提案で、ミーレ・ジャパンも日本導入を目指しています。

電子レンジ機能付きコンビネーションオーブンと組み合わせることで、一般的な60cm四方のビルトインスペースに、ベーキング、温め直し、スチーム調理を収める3-in-1を組み合わせたのが今回の「推し」。たとえばオーブンで肉料理を焼きながら、下部のスチームドロワーで野菜やじゃがいもを蒸すといった使い方が可能になります。

2つの独立したスチーム調理用コンテナを備え、異なる食材を同時に調理できるのです。壁面の引出しからスチームチキンや野菜が料理されて出てくるなんて、10年前には想像もできないことでした。またオーブンは「焼く」だけの機能から、多様な調理方法を求められている。それをミーレがいち早く実現したのです。
エウロクチーナの会場では、シェフによる「スチームドロワー」のデモンストレーションも行われました。

スチームドロワーと電子レンジ機能付きオーブンを組み合わせた3 in 1は、都市型の小さな住空間への応答です」とミーレでは提案しています。60cmのスペースにベーキング、温め、スチーム調理を収め、狭いスペースでも多様な調理を可能にします。
そして調理後の負担にも、ミーレは目を向けています。オーブン清掃の新しいアプローチとして紹介された「HydroClean(ハイドロクリーン)」は、使ったあとの手入れまでテクノロジーで軽減してくれます。未来のキッチンは、料理をする間だけでなく、準備、調理、片づけまでを一体で再設計する場所にしてくれます。

食器洗い機や洗濯機の技術を持つミーレだからこそ、オーブンの中で水流が庫内を自動洗浄する様子には驚きました。排水はタンクに集まり、手間もかかりません。なにより油のはねたオーブンをさっぱりと洗い上げる衛生感覚にドイツ人らしさを感じました。

アウトドアキッチンのための調理設備も登場しました。屋外のキッチンやBBQ設備というと、大掛かりなデザインという印象がありますが、ミーレならこんなミニマリスティックな現代建築のテラスでもすっきりと収まります。ドイツらしい無駄のないデザイン哲学は室内外で変わりません。

そして屋外用であってもハイテクノロジーであることも変わりません。メイン商品のガスグリル「Fire Pro IQ」は、温度を自動制御するインテリジェント・ガスグリル。4つのグリルゾーンを持ち、レシピに応じて加熱を自動調整。ミーレアプリや本体ディスプレイから操作できるので広い庭でも便利ですね。さらにオートクリーンモードで自動清掃も行い、ガーデンパーティの後の面倒なお掃除からも開放されるのです!

設備はグリルモジュール、調理モジュール、冷蔵、食洗、収納、ワークスペースをモジュールで組み合わせるシステム。ここに、やはりミーレオリジナルのグリル網、プランチャ、ピザストーン、収納システム、清掃用品など、60点以上のアクセサリーを組み合わせられるというものです。
またインテリアキッチンではビルトイン家電のフェイスデザインやカラーは重要な要素。ミーレの製品は20年使うという長期使用設計なだけに、色やフェイスのデザインにも非常に力を入れています。キッチン以上に長持ちし、インテリアのトレンドの変化にも対応することを、会場ではさまざまなマテリアルやカラーとともにアピールしました。「パールベージュ」などの新色は会場でも多くのキッチンメーカーが採用していました。

「Designed to Move with You」 というテーマに立ち返ってみます。「カリナリーコーチ」が考え、「M Sense」が火加減を見守り、スチームドロワーが小さな空間に多機能な調理を収め、ハイドロクリーンシステムが清掃の負担を減らす。ミーレの提案は、キッチンを「広さ」ではなく、「知能」と「可変性」で進化させる未来のテクノロジーで世界のあらゆる食生活に対応しようというものでした。いつもながら、その発想の先進性と実用化のスピード感にも驚いてしまいます。

今回のミーレが伝えていたのは「人が道具や機能にが合わせるキッチンから、キッチンの機能が使う人にいつのまにか寄り添うキッチンへ」。静かで、そして劇的な変化の到来だったといえます。
●ミーレの各種の記事はこちらからも読めます。
●ミーレ・ジャパンの公式WEBサイトこちらから
https://www.miele.co.jp/
●Miele直営店の営業時間や定休日、オンラインショールームはこちらから
https://life.miele.co.jp/lp/mec/
●Life with Miele ミーレのある「より良い暮らし」マガジンはこちら
https://life.miele.co.jp/
取材・文/本間美紀 早稲田大学第一文学部卒業後、インテリアの専門誌「室内」編集部に入社。独立後はインテリア視点からのキッチン、家具、住まい、家電、キッチンツールまで、デザインのある暮らしの取材を得意とし、建築家住宅の取材は300件以上、ユーザーとメーカー、両サイドからのインタビューを重視し、ドイツ、イタリア、北欧など海外取材も多く、セミナー活動も増えている。著書に「人生を変えるインテリアキッチン」「リアルキッチン&インテリア」(以上小学館)、「デザインキッチンの新しい選び方」(学芸出版社)。
Report& text=Miki Homma(Journalist)
ミーレ・ジャパン
TEL:0120-310-647 E-mail:info@miele.co.jp
https://www.miele.co.jp/