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Special Issue
Gaggenau Leads to Presence

今を注視する─ガゲナウが伝えるもの

2026.06.26

●神殿のようなインスタレーションが再び

ミラノデザインウィーク、今年もガゲナウがミラノ市内の「ヴィラ・ネッキ・カンピリオ」のガラスパビリオンを会場に、「PRESENCE」をテーマとしたインスタレーションで新作を発表しました。

製品の存在感を抑え、哲学を全面に出したこのインスタレーションはこの数年続く、ガゲナウの新しいコミュニケーションです。毎回、何が起こるのだろうと私が楽しみに足を運ぶブランドの一つです。

たどり着いたのは神殿のような空間。建物の周りには砂利が敷かれ、ジャリジャリと音を立てて、あえて遠回りをして入り口に進みます。来場者は歩く道筋の時間で、ミラノ巡りの慌ただしい気分から、緩やかに気分が切り替わります。

そして意表をつくおもてなしを受けたのです。それはウェルカムドリンク!入口では昆布と椎茸だけでとった「DASHI」が黒い器で差し出されました。

ジャリジャリと小石を踏みしめる足裏の感覚と聴覚。出汁を味わう味覚。ここで感覚を研ぎ澄ませ、心の準備をしてからガゲナウのプレゼンテーションに没入してほしいという導線です。とにかく見てまわればいい……と走り回ってばかりいると、こういった繊細なブランドプレゼンテーションを受け止めることができなくなります。ちなみに出汁はミュンヘン在住のシェフ、トオル・ナカムラ氏の監修によるものでした。

ガゲナウのコミュニケーションマネージャーは「入口の通路に入ると、次第に暗く、狭くなっていきます。私たちは、空間や建築が人の感情に影響を与えると考えているからです。ここに入ったとき、より穏やかになり、意識が集中していくように感じてほしい。そのため、このような構成にしました」と言っていましたが、まさにその体験を受け止めることができました。

注意深く感性を研ぎ澄ませること。ミラノデザインウィークではそんな態度(アティチュード)も必要なのです。

●不要なものをすべて取り除く

そして入った空間は最初、どこにガゲナウの製品があるのか、わからないほど静謐でした。

ガゲナウ マネージング・ディレクターのピーター・ゲッツさんは「私たちにとって重要だったのは、製品が建築の中に完全に溶け込み、その一部となることでした。製品そのものが主役になるのではありません。ここで感じる空間、光と影、天井、そして空間全体が生み出すエネルギーが主役なのです」

「トラバーチンを用いた階段は、イタリアの古代建築を想起させるものでもあります。また、モノリスのような造形と、私たちのいわば主役となる製品、大型の新しいオーブンを際立たせたいという意図もあります」と、製品以上に建築的な空間に力を入れたそうです。


「この建築全体は、基本的に『明晰さ』と『集中』を軸に構成されています。ここに見える素材は、明るい色調のコンクリートです。これほど大きな空間を、ここまで完璧に仕上げるのは難しい素材です。ここには何トンもの石材が使われています。施工チームは、この神殿のような空間をつくるために10日間を要しました」

中央に据えられたトラバーチン石の階段によってフレーミングされた、ガゲナウ Expressive シリーズのオーブン。

「いま、この瞬間にいること、そして不要なものをすべて取り除くこと。それがテーマです。私たちは徹底して削ぎ落とすアプローチを取りました。なぜかというと、ミラノはますます混雑し、商業的になっていて、どのブランドも、より目立とう、より大きく見せようとしていると感じるからです。そこで私たちは徹底的に削ぎ落とし、ガゲナウが何を大切にしているのかを示そうと『その反対をやってみよう』と決めたのです」とピーターさんは説明します。

●製品がだんだんと存在感を増してくる

この不思議な空間にいるうちに、だんだんと製品が目に入ってきます(これは本当に不思議な感覚です。だって製品はすでにあったのですから)。
壁のように見えた扉を開くと、クーリングシステム(冷蔵冷凍庫)が現れます。製品ごとに担当者がつき、説明をしてくれます。

ブラッシュドブロンズの扉材のキャビネットに収められた Vario cooling Expressive シリーズ。

冷蔵庫、冷凍庫、冷凍冷蔵庫、ワインキャビネットを、家具や建築のように構成できるモジュール式の冷却シリーズです。単体でも連続しても設置でき、棚やドアポケットの高さまで揃えることで、一体的な壁面をつくれます。

開発担当者は「温度プログラムは中に何を入れるかによって、選ぶことができます。エチレン吸収材も用意しています。中に入れて使う小さな粒状のもので、食品をより長く新鮮に保つことができます。たとえばヨーロッパはチーズの温度管理が大切。日本ではお刺身を食べるから、生魚の鮮度に気を使うでしょう? 世界中の繊細な食文化に寄り添うことができるのが私たちのクーリングシステムです」と話してくれました。

●バウハウスから着想したミニマルな新オーブン

約20年ぶりに全面刷新された、ビルトインオーブンを中心とするシリーズです。バウハウスとモダニズム建築を着想源とし、キッチン機器を「壁面のアート」のような建築的存在として見せます。フレームのついたタイプとミニマルなデザインが揃います。

バックライトを備えたミラーガラスと色付きガラスを背景に配置されたガゲナウ Minimalistic シリーズ。

開発担当者は、先ほどの写真の、石の階段によってフレーミングされた Expressive シリーズのオーブンを見ながらこう説明します。

「ここにあるのは30インチ、つまり幅76センチのオーブンです。このシリーズには幅60センチのサイズもありますが、このモデルはそれよりも16センチ広く、庫内も大きくなっています。私はデザイン部門でこの製品のデザインを担当しています。これは通常のオーブンですが、この製品と組み合わせられるコンビスチームオーブンも用意しています。上下に重ねることも、横に並べることもできます。とても美しい組み合わせになります。横に並べる場合には、カリナリードロワーや真空ドロワーなどを追加することも可能です」

それにしても大きい!と感想を伝えると

「この大きさがあるからこそ、こうした美的なディテールを表現するための余白が生まれるのです。また中央には操作リングを加えています。ダイヤルやリングを操作部にすることは、ガゲナウの特徴的なシグネチャー・エレメントです。パッとキッチン空間を見て、リングがあればガゲナウの製品だと視覚的に理解できます」

そしてガゲナウの歴史上のシグネチャーモデルで、今も現役の幅90センチオーブン「EB333」。これは神殿ように幾何学的な石が積まれたキッチンの奥に、ビルトインされていました。オーラを放つような存在感があり、さすが発売40年となるロングセラーモデルです。

●クックトップも「変わらない」「見せない」がテーマ

また日本でも人気のVARIOクックトップシリーズも、焼杉仕上げのキャビネットに玄武岩のワークトップのキッチンに収められています。ガスコントもバーナー部が改良されるなど、デザインのアイコン面はほぼ変えずに機能は静かに確実に進化しているのです。

下の写真はこちらもすでに発表になっている「エッセンシャル・インダクション」という見えないIHクッキングヒーターです。手前にダイヤルが付いているのは、その天面がすでに加熱ゾーンになっており、使わないときは調理スペースやビュッフェコーナーにすることできるものです。

IHモジュールを12mm厚のデクトン製ワークトップの下に組み込み、天板上には加熱位置を示す小さなLEDの「ドット」だけが現れます。

今回のガゲナウの展示には、すべてのコーナーに担当者が立っていました。ただ見つめるだけでも美しく、でも一歩踏み込んで会話をすれば機能から哲学まで、だれもが同じ言葉で語ることができる。ガゲナウで働く人たちの誇りを感じることができました。

現在は世界50カ国以上で展開し、世界の主要都市に60を超えるフラッグシップおよびショールームを構えています。そこで同じ哲学を伝えるのは、並大抵のことではありません。そのため世界中からのディーラーや建築家、キッチンプランナーが集まるこの場所で、ガゲナウは明確に哲学と製品コンセプトを伝えていたのです。

すべての情報を遮断し「ガゲナウの今、ここ」に集中する。そのための時間と空間を用意していたのが「PRESENCE」の意味と言えるでしょう。

●2024のミラノデザインウィークでのガゲナウ展示レポートはこちらから
https://realkitchen-interior.com/sp-issue/40662

●日本でのガゲナウ総輸入販売元 N・TECのサイトはこちらから
https://www.ntec.tv

●N・TECのショールームのご予約はこちらから
https://www.ntec.tv/showroom/

 

取材・文/本間美紀 早稲田大学第一文学部卒業後、インテリアの専門誌「室内」編集部に入社。独立後はインテリア視点からのキッチン、家具、住まい、家電、キッチンツールまで、デザインのある暮らしの取材を得意とし、建築家住宅の取材は300件以上、ユーザーとメーカー、両サイドからのインタビューを重視し、ドイツ、イタリア、北欧など海外取材も多く、セミナー活動も増えている。著書に「人生を変えるインテリアキッチン」「リアルキッチン&インテリア」(以上小学館)、「デザインキッチンの新しい選び方」(学芸出版社)。

Report& text=Miki Homma(Journalist)

 

Gaggenau東京ショールーム
東京都港区東麻布1-8-4
営業 9:00-17:00
休 土・日曜・祝日・年末年始・夏季
TEL 03-5545-3877
https://www.ntec.tv

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