[PR] [PR]
Special Issue
Arketipo Beyond the crowd

アルケティポ 喧騒を離れて

2026.07.21

【ミラノデザインウィークレポート 家具編 スタート】

●アルケティポ──天空のレジデンスを訪ねて

ミラノ中央駅から歩けるその場所に、その天空のレジデンスはありました。高さ117m、29階のペントハウス。そこで私は、これまでミラノデザインウィークで、あまり出会ったことのないイタリアブランド「アルケティポ フィレンツェ」に出会ったのです。

ミラノサローネ国際家具見本市では長く常連のブランドですが、2026年は展示を市内の高層レジデンスに移し「ビヨンド・ザ・クラウド」と称して、「都市のノイズから切り離された“浮遊する静寂”」の中で、個性的な世界観を披露しました。

その名は「アルケティポ フィレンツェ」(以下アルケティポ)。ブランド名はArketipoと綴りますが「アルケティポ」とは、古代ギリシャ語の「起源」と「型」を語源とする、原型を意味します。

今回の企画はその哲学を表現した予約制のレジデンス。普段は個人のレジデンスとして使われる空間を、オーナーの好意でデザインウィーク中に貸し切った束の間のレジデンスです。円形の住居空間で、ピンクに塗られた壁や艶やかな黒の階段の手すりにオーナーの個性を見てとることができます。

その空間に全く違う色、形、存在感ながら、調和するのがアルケティポの家具です。テーブル「エレメンツ」は黒の木天板とエメラルドグリーンの大理石が幾何学的に配置され、抽象画のよう。チェアはセージグリーンの柔らかな革で貼られた「シエナ」。

この柔と剛を兼ね備えたダイニングセットは、この家の中心となる螺旋階段の吹き抜けから、ドラマチックなシーンを見せてくれます。テーブルに着くと石と木のマテリアルの表現を味わえ、建築的な視点からはアートのように見える。この「柔と剛」「寄り引き」の強弱が、アルケティポのプロダクトに共通する印象です。

円形の間取りは意外なことにミラノの一般的な住居より狭く、個性的な家具のレイアウトに奮闘したそうですが、このレジデンスは訪れる人に一目でブランドの個性を伝える空間として成立していました。

●メイド・イン・フィレンツェを誇るブランド

まだ日本では新顔のブランドですが、創業は1982年。クラッシック家具もまだ主流であり、一方でポストモダンの影響も色濃く残った時代です。多くのコレクションは創業当時のデザインのものを継続していますが、今見ると実に斬新で新鮮です。

創業一族からブランドを継承したCEOのロレンツォ・カッテランさんに話を聞きました。彼は家具の家業に生まれながら、トスカーナに移り住みワイナリーを起業しました。ワインの奥深さに魅せられたのです。ワインを極めるうちに再び行き着いたのはインテリア。ワインと空間、工芸と情熱が響き合う美学でした。

「アルケティポは1980年代にフィレンツェの革の手仕事をソファに生かすために、ソファの専門ブランドとして創業しました。フィレンツェには各分野の多様な職人技術があります。たとえばサルトリア仕立てという服飾のオーダーは人それぞれの体に合わせた立体的な縫製や裁断ができる。それを応用して革のソファも個性的な形やふっくらとした仕上がりなど、あらゆる表現に応用できるように挑戦したのです」

●アップホルストリー技術を多様に駆使して

アップホルストリーとはソファやラウンジチェア、ベッドなどに駆使される、詰め物をして革や布を張る技術を指します。アルケティポはフィレンツェで培われたこの技術を上手に活用しています。

ソファ「ワイドボーイ」は構造は硬いレザーパネルで、ヴィンテージの革製品を思わせます。そこにふっくらとした座面やアームがはみださんばかりに仕立てられ、座る人を抱くように包み込みます。ここにも「剛と柔」の哲学が見えます。

「そして僕たちがやっているのは新しいデザインを生み出すこと以上に、1980年代当時のデザインを、再解釈して提案することです。このスクエア型のアームチェア「スプリング」は今ではとても考えられないデザインです。スクエアフレームの座面がカンチレバー構造で浮いている。円筒状に張られた革のフレームとアームが体を包み、カンチレバーのしなりが心地よい揺れを生み出す。そしてデザインはとても個性的です」

1980年代にデザインされたスクエア型のアームチェア「スプリング」

アルケティポではもちろんベーシックなデザインのソファもたくさんラインナップしています。
けれどもミニマルというニュアンスとは違って、どこかフィレンツェ流の色気があるように思えます。たとえば変形の空間に植物画が描かれたプライベートリビング。ソファ「ミルキー ウェイ」のアームの切り込みや角度、ラウンジチェア「ブラジリア」のラウンドするアームなど、正統派コンテンポラリーとは違うニュアンスが感じられ、このリビングをうまくまとめています。

話が前後しますが、実はエレベーターを降りてすぐに出迎えてくれたのが、このソファ「ナイト フィーバー」。「エントランスではゲストをお待たせしたり、帰り際に靴を履いたり、コートを着たりといろいろなことをする。どの方向からも座れて、景色を眺めたりできる。これはそんなソファとしてデザインされ、アルケティポのソファの高い造形技術を示しています。見た目も愛らしいフォルムです。

●独特の色合わせ、マテリアルミックスも尊重

そして圧巻なのが、これぞフィレンツェと思わせる色のチョイスや素材の合わせ方。これに関してはロレンツォさんも「「過去のコレクションには今では発想できない造形があります。色も強い。イエロー、グリーン、ブルー。私自身も手に入れるには勇気がいるなと思いますが、見せなければ何も始まりません」

「マテリア」も1980年代にデザインされたものですが、ハンマー仕上げしたような金属に湖面のようなガラストップや天然石が重ねられれ、アートのような美しさ。けれども仕上げはどこか優しさがあり、コーヒーカップやワイングラスを気軽に置けそうな雰囲気もあります。

ロレンツォ氏は「このテーブルのデザインの中には、磁力のような対比が脈動しています。ひとつは、古代のトーテムのような確信に満ちた存在感で空間を支配する、金属製シリンダーの圧倒的な安定感。ポリッシュゴールドまたはクローム仕上げの表面は滑らかではなく、巧みにハンマー加工されており、光と影が絶えず変化するような動的表情を生み出しています」と説明します。また選ぶガラスの色や石の色、サイズで全く違う印象を生み出すのにも驚きます。

リビングでの景色にも「色合わせの妙」があります。こちらは深みのあるソファ「ボディガード」と金属を無限大記号のように曲げて作ったゴールド仕上げのフレームにガラストップをのせた「ムスタッシュ」。

フレームは内側までレッドやブルーのラッカー塗装がされ、あらゆる見た目を配慮する情熱が感じられます。「引いた目で美しく、寄ってみるとそのディテールに感嘆する」ここにアルケティポらしさを感じます。

●都会のテラスを天空の楽園に変えるアウトドア家具

1980年代と変わったことは、ソファやフレームの張り地や部材の素材の技術、仕上げが進化し、屋外で使える家具が増えたことです。この傾向にアルケティポももちろん乗り遅れず、円筒形のレジデンスを囲む360度見渡せるテラスを、天空の楽園に変えてしまいました。

「サントス XL」はモジュール式で自由に組むことのできるソファで、室内のように壁面や窓など「正面」のない屋外空間で、自由な視線設計ができます。これも実は1970年代にすでにデザインされていたもので、角部を少し丸めるなど、現代風のアレンジを施しています。

他にもさまざまなラウンジの提案があり、多くの人がミラノの太陽光の下、くつろいでいました。

●創業当時の情熱を正しく継承し、新たに掘り起こす

イタリアの伝統工芸のハブとなる都市フィレンツェに魅せられ、移住してこのブランドを手に入れたCEOのロレンツォ・カッテラン氏は「家具は置かれる建築との関係にある」と考えて天空のレジデンス企画を決意したと話します。

社長の情熱はこのブランドの80年代の魅力を新たに掘り起こしました。アルケティポの家具には本能を揺さぶるような生命感が息づいていました。

日本ではカスタムキッチンで知られる「クチーナ」のファニチャーショップ「カッテラン イタリア ジャパン」で取り扱っています。個性の強い「アートファニチャー」ですが、実用性もかなり高いと感じました。とくにクチーナのインテリアキッチンと合わせて使うことで、相乗効果を発揮しそうです。

 

●アルケティポ フィレンツェの日本での取り扱い先はこちら
Cattelan Italia
https://cattelanitalia.jp/brands/arketipofirenze/

 

取材・文/本間美紀 早稲田大学第一文学部卒業後、インテリアの専門誌「室内」編集部に入社。独立後はインテリア視点からのキッチン、家具、住まい、家電、キッチンツールまで、デザインのある暮らしの取材を得意とし、建築家住宅の取材は300件以上、ユーザーとメーカー、両サイドからのインタビューを重視し、ドイツ、イタリア、北欧など海外取材も多く、セミナー活動も増えている。著書に「人生を変えるインテリアキッチン」「リアルキッチン&インテリア」(以上小学館)、「デザインキッチンの新しい選び方」(学芸出版社)。

Report& text=Miki Homma(Journalist)

Cattelan Italia (アルケティポ フィレンツェ販売先)

東京都目黒区鷹番1-2-6
TEL:03-5773-0722
https://cattelanitalia.jp/brands/arketipofirenze/

Recommend

TOP