【本間美紀のコラム 2022/06/06】
6月5日からロンドン経由でミラノに入ってます。2022年のミラノサローネの取材が始まりました。
乗り継ぎのヒースロー空港はものすごい人で、マスクをしてない人も大分いるのが気になりつつ、世界がだいぶ元に戻りつつあることを実感している。
到着当日の5日。ミラノスカラ座をサローネが貸し切って行われる、記念すべきミラノサローネ60周年、公式前夜祭にご招待をいただいた。
ミラノスカラ座とミラノサローネが連動し、出展者や家具、政治家や行政、インテリア業界の要人、アパレルや金融など異業種のキーパーソン、ジャーナリストが招かれる。
ミラノサローネはもちろんビジネスの見本市なのだけど、そもそもは文化や教養、芸術が、家具やインテリアのビジネスの土壌なのだと、体感させてくれる。
翌日から始まる玉石混交のモダンデザインの海に飛び込む前に、古典や歴史あるものの素晴らしさを再確認させてくれる。そうでなければ、本物を見る目が育まれないから。
そのセンスが素晴らしい!日本では少しでも行政が絡むと、なんだか野暮ったい記念行事になってしまう。それがそうならないのがミラノサローネ。
建築、椅子の仕立てやアップホルストリー、木彫、金属加工など、イタリアの家具の技術はここから発展しているということを、スカラ座の建築がリアルに伝える。
品のある紺色の制服に身を包んだ案内係のプロ意識、そして首から掛けているスカラ座のメダル。ロビーでのウェルカムドリンクの振る舞いから、終わりまでプロのスタッフの高い意識に包まれた会場。
そして始まったプログラムはフレデリック・チャスリンが踊るように指揮する、モーツァルトの軽やかなシンフォニー38。
後半は一転してモダンバレエ!生オケでストラスヴィンスキーの「アポロ」。振り付けはバランシン。
この演目をスカラ座のバレリーノ、男性エトワールのロベルト•ボッレと3人のバレリーナが踊り切り、会場は拍手喝采。目が離せない踊りは持って生まれた肉体を、磨き上げたその存在感から生じるもの。
開催前のロビーでは家具ブランドの要人や建築家、デザイナー、政治家、実業家があつまり、社交を深める。
こんな光景を目にするのもミラノのとても大切な瞬間だ。
コラム=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)Text=Miki Homma(journalist)
●前回のコラム「アンビエンテを知っていますか」はこちら
●次回のコラム「アットホームの意味を知る」はこちら
●ミラノサローネ過去記事はこちらから