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ミラノ取材の旅01 邸宅のショールーム

2025.05.07 キッチンジャーナリスト本間美紀

【本間美紀のコラム/2025/5月7日】

4月のミラノ取材の日記です。欠航で初日の予定が吹っ飛ぶけど、旅のトラブル「あるある」ということで、取材はモルテーニの新ショールーム「パラッツィオ・モルテーニ」からスタート。パラッツィオとは邸宅の意味で、近代からミラノ市街、近郊に貴族や富豪が建てた石造りの邸宅はあちこちに残っている。

スカラ座のあるマンゾーニ通りの建物をヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンがモルテーニの世界観でリノベーションしている。MDW期間中は完全予約制、一般入場不可のところを、いち早くご案内いただく。

エントランスは2手に分かれ、アイコニックモデルであるキッチンが展示。もう一方にはモルテーニのシグネチャーとなるジオ・ポンティの家具が展示してある。2つのウィンドウで強烈なアイデンティティを表現している。このウィンドウは夜に見ると綺麗なので、後日夜にもその前を通ってみた。

インナーコートのあるミラノらしい邸宅の中央にガラスの天井を設えている。19世紀後半に建てられた7階建ての建物は3000㎡の大邸宅。こんな建物気が付かなかった!以前はなんだったのだろう。

ヴィンセントの設計したミニマリスティックな階段が、とにかく美しい。家具のフロアの濃密さを一度、この階段の空間がクリアにして、それが5フロア、リピートされる。

ガラスの天井の下では、外壁の一部が内装になるため(わかりますか?)、19世紀に設えられた石の壁がアートのように見える。時を経たものは、空間に深みを与え、モルテーニの家具がそういったものと似合うことも伝えている。

凛としたイメージの強いモルテーニ家具だけど、今年はフランス人の新デザイナー、クリストフ・デルクールを起用し、柔らかさ、変形、ガラスやメタルなどの艶感を加え、テクスチャーミックスの要素が強まっている。

ラウンドのスナックテーブル(日本では十分、ダイニングになると思う)を角面に配した、最近人気のスタイル。ワークトップに使っている天然石の濃度、妖艶さ。

上階まで登っていくと、ガラスの天井が見下ろせる。肉眼ではソファのフォルムが上から見られて、建築やインテリアを見る視線の考え方がまたガラリと変わる。

後日、夜にショールームを通ってみた。ジオ・ポンティのもっとも愛される椅子「154.2」。背と座のカラースキームもジオ・ポンティ考案のままのモデル。

そしてキッチンは、モルテーニらしい端正な直線を生かした、縦格子の扉のモデル「ラツィオ」。このパラッツィオは夜に眺めるのもおすすめ。

「パラッツィオ・モルテーニ」は完全限定公開だったけど、向かいにあるポルディ・ペッツオーリ美術館で、新作の一部やジオ・ポンティのグラフィックを公開する展示会も開かれた。

実はここに到着する前に、ヘルシンキで欠航に遭い、雪の舞うワルシャワ経由でミラノにたどり着いたため、この春の緑、花粉の香りさえ、うれしくて、この美術館の庭園の光と温かさ、そして家具を存分に堪能した。

東京のパラッツィオ・モルテーニも4月30日にオープンし、ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンの新築のショールームがお披露目され、東京のインテリア業界はその話題で持ちきり。ミラノの本家本元を見た後だと、解釈も深くなる。その思いで東京ショールームも拝見した。

Molteni&C

コラム=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)
Text=Miki Homma(journalist)

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