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amstyle:beyond the pradise
インナーバルコニーとミラーリングするように
それはよくある「映える」ソファだと思っていた。シロクマが中央に配された大きなソファで、「パック」という。
エドラという家具のブランドから出ている。日本でも2023年から取扱が始まり、大阪の華やかなホテルでお披露目されたため、エドラを派手好きな家具ブランドとして、誤解してしまったが、そうではなかった。
このソファをデザインしたのがフランチェスコ・ビンファレ氏だ。
フランチェスコ・ビンファレ氏はかなり特別な人だ。これまで出会ったどの家具デザイナーとも違う人だ。それをミラノデザインウィーク中に市内でADIミュージアムで開催された彼の展覧会で知った。
若い頃はカッシーナで家具の開発責任者を務めながら、画家やクリエイターとしての活動を精力的に行なっていた。というか、彼の本質はクリエイターであり、それがさまざまなものに展開されてゆくのだと、その展覧会で感じた。
たくさんのスケッチやドローイングが展示されていたが、それは彼の、何にも束縛されないファーストアイディアだった。この絵は堕天使で、何度も彼の作品のモチーフになっている。堕天使は罪を犯し神に追われる他に、自らの意志を持って天界から離脱するものもいる。
ビンファレ氏の頭の中にはストーリーが降りてくるのだ。ある日、ふいに。成熟された何かが香りを放つように。それが形になる時、アートになるのか、家具になるのか、身体表現になるのかは、降りてきた堕天使による。
展示を進むと、堕天使が羽根を休めていた。天使に話しかけているのか、羽根を広げる鳥。
彼らが座っている場所は、やはりエドラでつくられた地球のようなラグで、毛足の長さや色合いは、彼のストーリーから生まれている。