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想像を超えたものを見せる意味

2024.08.29 キッチンジャーナリスト本間美紀

・1通の真摯な感想を受け止める

そしてまた、読者の方から1通の感想をいただく。これもとても心に残ったものなので、ご本人の許可を得て、ここで紹介させていただく。

ー以下、「リアルリビング&インテリア」に寄せられた感想ー

先日発表された新刊「リアルリビング&インテリアISSUE03」について感想を寄せさせていただきます。
過去のISSUEについては、正直にパラパラ(dmagazineで!)拝見したことはあったのですが、今回初めて、実物の本を手に取ってテキストも含めじっくり拝読させていただきました。

まず嬉しい驚きであったのは、この本が情報誌ではなく、家具とその文化についての批評誌であったということです。
これは日本では本当に貴重な存在です。
「新作はこれで、デザイナーは誰で・・・・云々」といった情報に終始しがちな一般的な記事に対して、それらを俯瞰した筆者・本間さんの視点が明確に感じられるところが素晴らしく読み応えを感じました。

中でも冒頭の「あなたは誰?と改めて問われる」という問いかけにはドキッとさせられました。
私もサローネ等に通う者として、自分がそのキャッチボールの相手たり得ているかという問いが頭をよぎり、姿勢が正される感があります。
良い意味でですが読者を甘やかさない(つまりは相手をこの程度と侮り誤魔化しの手加減をしない)清々しさ、誠実さを感じました。

本編ではINSPIRATIONの章で、文字通り多くの視点とインスピレーションを得ることができました。
ブランドを横断した切り口で今の時代のクリエイションが目指すもの、それによる暮らしの可能性を感じました。

またその後のブランド別のページに登場する詩的であると同時に本質を突いたコピーが、各ブランドの姿勢・取り組みを理解することを助けてくれました。

これこそが言葉の力なのだと思いますが、これまで実際に会場で見ていた家具が、一層意味のある存在として感じられました。

最後にひとつリクエストを申し上げると、ときにブランドが迷宮することがあるとすれば
期待を込めて厳しい批評でエールを送るような発信もしていただけたら、、、と
本紙の主旨からは外れてしまうかもしれませんが、機会があればお聞きしてみたいです。

[引用ここまで]

実はこの方、1、2回しかお会いしたことのない方で、長くお話ししたことはない。でもなぜこのように読み解けるのか。その見識の深さにやっぱり驚く。伝えたいものを受け止める力を持つ。

なぜ私がこのコラムで時々、みなさんからのフィードバックに触れるのか、そしてアンケートでもデジタル時代に手書きのアンケートを
お願いしているのか?

仕事というのは目の前の発注者の注文をこなすことではないと考えているから。作業から生まれた成果物が、目的通りに伝わり、相手が行動を起こし、人生を変えてくれる。そこまでが仕事。

視野が狭くならないように、多様な方向からきちんとフィードバックを受け、新しい世界を切り開くことが使命。みなさんがお金をかけてでも必要な本なり情報を、先を先を見通して伝えていきたいから。

だから想像を超えたものをあえて紹介する。インタビューではありきたりなキッチンや家具の説明ではなくて、できるかぎりその人のパーソナリティと住まいの関わりを読み解いて、伝えていきたい。ライフスタイルの変化にもつねに敏感でありたい。

そうでなければ文章やデザインといった物質化できないものに価値を与えることはできない。そのために読者の皆さんとお会いしたり、フィードバックをいただくことが必要。

ということで、この秋はまた読者イベントやプロ向けのイベントを準備中。この「リアルキッチン&インテリア」で随時お知らせしていきますので、ぜひチェック、ご応募をお待ちしています。

コラム=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)
Text=Miki Homma(journalist)

●前回のコラム「右脳と左脳、校了していつも思うこと」はこちら

【本間美紀のコラム/バックナンバーはこちら】

⚫︎この数年の家具の新しい考え方をミラノサローネに絡めて知りたい方、全く新しいタイプのインテリアムック「リアルリビング&インテリア」は本当におすすめです。ぜひこの機会にご一読を!

・リアルリビング&インテリアISSUE03

 

 

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