⚫︎How high the moon 個性的に鈍く光り続ける
「キッチンから見えるのはギャラリーのような空間です。床はそのままモルタル。そこに二人が好きな90年代モダンの名作を飾っていますが、もちろんどんどん座っていいんです」(和田さん)
3本脚のヴィンテージアントチェア、倉俣史朗の作品など……、1990年代を中心とした名作椅子を集めてきた夫婦。床面から壁に当てた間接照明が、シルエットを浮かび上がらせています。
影のようなパターンが印象的な布を、部屋の仕切りに使っています。「NUNO」で選んだ「オパール竹の花」という生地。
無機質な空間だからこそ、アクセントとして敷きたかったというキリム。倉俣史朗の名作椅子〝Sing Sing Sing〟がメッシュの妖艶な影を落としています。
シックな黒に包まれたキッチンで、順子さんになぜ黒に惹かれたのかを改めて聞いてみました。
「私は自分自身を夜の空で輝く月のように感じています。人生では笑うこと楽しむことも大切ですが、黒い夜空で鈍く静かに光り続けることも私らしさだと思っています」(妻)
キッチンリノベーション設計=和田浩一(ステュディオ・カズ)
・初出誌「REALKITCHEN&INTEIROR season 8」
取材・文=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)
早稲田大学第一文学部卒業後、インテリアの専門誌「室内」編集部に入社。独立後はインテリア視点からのキッチン、家具、住まい、家電、キッチンツールまで、デザインのある暮らしの取材を得意とし、建築家住宅の取材は300件以上、ユーザーとメーカー、両サイドからのインタビューを重視し、ドイツ、イタリア、北欧など海外取材も多く、セミナー活動も増えている。著書に「人生を変えるインテリアキッチン」「リアルキッチン&インテリア」「リアルリビング&インテリア」(以上小学館)、「デザインキッチンの新しい選び方」(学芸出版社)
撮影/岡村享則 photo=Yukinori Okamura
[料理好きのインテリアキッチン]
01 BLACK,MEAT,MUSIC ずっと探していた、私たちだけの黒
[料理好きのインテリアキッチン]
今年で12年目を迎える「リアルキッチン&インテリア」のアーカイブから、キッチンストーリーの傑作選をお届けします。料理もインテリア、どちらも好き。そんな想いを叶えたキッチンを取り上げます。リアルキッチン&インテリアならではの、タイムレスな物語をお楽しみください。月2回、更新予定です。