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The Elevation of Gravity
ガゲナウが目指す究極の静けさ
[クチュールメイドキッチンのamstyle、その世界観をブランドディレクターの清水克一郎が自ら読み解く連載「beyond the pradise」その新章Season02が始まります。毎月1回更新予定です。キッチン制作と語り=清水克一郎(amstyle)]
この家にはたくさんの高低差があります。人の立つ位置や過ごす時間によって、いろいろな景色が見えて、使い方が変わる。とても厳格に作られたような美しさがあるのに、気がつかないところを少しだけ緩ませているように感じます。
数段だけの階段。大きな階段をつくるより意匠的には難しいでしょう。でも彫刻のように見える。これを昇ると緑に面したダイニング空間とキッチンが広がるのですが、上の写真と下の写真ではまったく景色が違うでしょう。この変化が訪れる人の感情を動かすのです。
そんな気持ちになった後にすぐ来るのがキッチンです。オーナーからはキッチンとテーブルが一体となったプランを依頼されました。
従来なら、キッチンとテーブルはすっと同じ高さでつながった方が綺麗です。ですがここではあえて段差をつけて、素材もキッチンはセラミック、テーブルはブラックオークと変えました。来客があればメインテーブルを囲むのでしょうが、近しい人だけの時間は触り心地の良い木のテーブルでくつろげる。
これもほんの少しの「緩さ」や「崩し」です。ただしキッチン全体のラインは決して、建築との調和を忘れてはならないのです。