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Special Issue
German house-as it is 01

ありのままを尊ぶドイツの家

2019.05.30 キッチンジャーナリスト 本間美紀

[REALKITCHEN& INTERIOR ×ドイツの家]

ドイツの家というとみなさんは何を想像するでしょうか? 三角屋根の並ぶ街、うろこ屋根、レンガの壁…。私の言葉で言えばドイツの家は「生きている」家です。

リアルキッチン&インテリアではキッチンでも家電でもドイツ製品に人気があります。住む人を主役にする居心地の良さ、シンプルなデザイン、使い続けるための機能、エネルギーや時間の無駄をなくす。頭ではわかっていても、なかなか感じられないドイツの家。ドイツの家は、住む人の人生とリンクしてゆく一つの「システム」なのだという私の実感体験を、3回の連載でお伝えしていきます。

●ドイツの家は生きている

今回訪ねたのは、ドイツの北西部・ミュンスター郊外にあるコルドゥラ・フォン・シュロッターさんのお宅です。大学生、高校生のお子さんとご主人の4人で暮らしています。「10年前にこの家を建てました。その時に意識したのは自然との一体感です」。

自然との一体感というと、日本では窓から緑が見える、内装に木や石などの自然素材をつかっているというほどの意識でしょう。けれどもドイツの意識は違うようです。「この家はできるかぎりローカルパワー(自然エネルギー)を使っているんです」とコルドゥラさん。それは地元の環境から得られるエネルギーという自然の恵みです。太陽光と地面からの熱。それを両方活用しています。

コルドゥラ・フォン・シュロッターさん。大学生になるお嬢さん(右)は「この家が建った時、私は10歳でしたが両親の家づくりを見て、自分もローカルパワーを活かす家にしたいと思いました」と話してくれました。

この家ではソーラーシステムを備えています。屋根は急勾配で太陽の光を受けやすくしています。家の地下には70mもの穴を掘って地熱を吸い上げています。それを電気にして活用し、暮らしを回しているのです。

ドイツの家では太陽の光を活用したり、壁や窓で断熱をして、自然のエネルギーを最大限活用するのが当たり前。それをパッシブハウス(自然の恵みを受け取る家)といいます。受け取る──その言葉に自然への敬意を感じます。さらにコルドゥラさんの住まいは電力を生み出す「エナジープラス」住宅なのだといます。

リビングはテラスと一体になるのが当たり前。これは「ヘーベシーベ」と呼ばれる引き違いの窓。ドイツの窓がなぜ大きくて美しく、エネルギーをセーブできるのかはまた次回、お伝えしますね。

「平均で11キロワット発電します。でもわが家は7キロワットしか必要としません。できる限り窓から逃げる熱の無駄をなくし、家電やキッチン、給湯器などもエネルギーを効率よく使うシステムを使っているからです。時々売電もしますよ」と家全体が、自然のエネルギーを無駄なく巡らせる考え方に貫かれているそうです。

これがドイツ人の考える自然との一体感なのです。太陽も風も土地も水の流れも──これをすべて借りながら人間は地球に住まわせてもらっているのだという思いが伝わります。ドイツの家は生きている!

コルドゥラさんの一家は貴族の出身で、代々伝わる祖先の絵画も飾られています。

自然のエネルギーを家の中に活用する住まいは、コルドゥラさんがご主人と話し合って決め、地元の工務店に作ってもらいました。大きな理由は「エネルギーの無駄がなく経済的だから」ということですが、一方で「ローカルパワー(自然エネルギー)を活かすことに誇りも感じるし、独立できる」とも言います。ドイツではエナジープラス住宅を建てるための専門誌もあって、二人は読み込んで勉強したそうです。自然エネルギーの活用は、住宅を建てる時に知識層は当然のごとく勉強すること、とも言います。

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