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Snaidero -Designed for Every World

スナイデロ─世界にフィットするデザインキッチン

2026.06.19

●イタリアで切手になったキッチン

キッチンブランドが、国の切手になる。2026年エウロクチーナ(ミラノ国際見本市会場)でのスナイデロでのインタビューは、そんなニュースから始まりました。今年4月、イタリアの郵政省はスナイデロの創業80周年を記念し、「イタリアのものづくりとメイド・イン・イタリーの卓越性」を称えるシリーズのひとつとして、スナイデロに捧げる切手を発行したのです。

エウロクチーナのスナイデロブース

切手に描かれたのは、スナイデロを象徴するキッチン「Ola 20」の一部です。Olaは、カーデザインで知られるピニンファリーナとの協業から生まれたキッチンで、曲線的なフォルムと、彫刻のような存在感を持つモデルです。

国の切手になるということは、単なる商品ではなく、その国の産業や文化を象徴する存在として認められたということでもあります。スナイデロは、日本ではまだ広く知られているブランドではないかもしれません。しかしイタリアでは、キッチンデザインの歴史を語るうえで欠かすことのできない国民的なメジャーブランドのひとつです。

●1946年、北イタリアで始まったキッチンブランド

スナイデロは、1946年にイタリア北東部フリウリ地方で創業したキッチンブランドです。創業者はリノ・スナイデロ。戦後の住宅需要が高まる時代に、家具づくりの工房として始まりました。エウロクチーナでは主要な出展者の一つであり、イタリアでは国民的に知られるメジャーブランドです。

キッチンの専門ブランドとして時代の変化に早くから反応し、モジュール化されたキッチン、空間に合わせて構成できるキッチンを追求してきました。イタリアでも決して広い家ばかりではなく、さまざまな組み合わせで使える「実用的なキッチン」を多くの人に受けいれられるデザインと融合。たとえばモジュールシステムを活用し、リビング家具やダイニングとキッチンがシームレスでつながるプランも実現でき、限られたスペースでもマルチパーパスなキッチンがつくれる、というメリットがあります。

全世界の販売を統括するロベルト・ドレオリーニさんは「今後のスナイデロは高級ゾーンに方向性をシフトしていきます。以前は幅広い価格帯に対応していましたが、戦略的には良くない方向だったと分析しています。そのため、安価なモデルは全て廃止し、もともとのデザイン意識の高さに即した高価格ゾーンに力を入れていきます。今後、全てのモデルはハイエンドモデルに完全にチェンジしていきます」

これは非常に大きな変化です。イタリアの国民的なブランドから、世界へのハイエンド市場へと大きなチャレンジを表明したのが、このエウロクチーナの会場でした。

●デザイン感度の高さを建築で伝えるスナイデロ

スナイデロは創業以来、デザインの開発には力を入れてきました。その証となるのが本社工場です。設計はイタリアの有名な建築家アンジェロ・マンジャロッティです。1973年に依頼され、1978年に完成した建築で、丸窓が連続する金属外装のオフィス棟が特徴です。スナイデロの「デザイン、リサーチ、革新へ向かう企業家精神」を象徴する建築で、これだけでもデザインへの意識の高さがわかります。

そして重要なのが、デザインラインの「イコーネ(アイコンの意味)コレクション」モデルの「オラ」。ワークトップの下で曲線を描くレッグは、スナイデロの個性を定義づける、重要なモデル。非常に個性的ですが、決して廃盤にせずタイムレスなデザインとしてブランドの哲学を伝えています。

1990年にピニンファリーナとの協業から生まれたオラが、流れるような曲線、軽やかさ、動きのあるフォルムによって、キッチンの概念を大きく変えました。技術と美しさが一体になっています。トレンドを追うのではなく、時間を超えて価値を保つ「未来のクラシック」と呼べる存在です。

●モジュールキッチンをベースに発展

一方で、「使いやすさ、ユーザーに寄り添う」という意味で、スナイデロの核にあるのは、モジュールという考え方です。扉、素材、ハンドル、収納、天板、アクセサリー。それらを組み合わせながら、空間や暮らしに合わせてキッチンを構成していく。その思想は、現在の「システマスナイデロ」にも受け継がれています。

システマスナイデロ「エレメンティ」

このシステムにはプリンリシピオ、フォリオ、ウェイ、オペラ、オルビタ、フレーム、エレメンティ、クアドラ、リンクといったモデルがそろいます。それぞれに個性がありながら、共通しているのは、美しさと機能性を一体で考える姿勢です。

システマスナイデロ「フレーム」。マッシモ・イオーザ・ギーニによるデザイン

システマスナイデロは、単なるモデルの集合ではありません。22mm厚の扉を基本とし、素材や構成要素、ディテールによって美的アイデンティティをつくり出す、統合されたキッチンシステムです。取っ手あり、取っ手なしの仕様を選べるだけでなく、仕上げや扉、特徴的なパーツを組み合わせることで、空間に合わせたキッチンをつくることができます。

●エウロクチーナでの新展開はリビング

2026年のスナイデロブースでは、この「システマ」の考え方を軸に、新しいモデルや提案が発表されていました。まるで部屋のよう!キッチンのボリュームやサイズ感も、過去のエウロクチーナの展示に比べ、ゆったりとしています。キッチン専門のブランドから、空間を作るリビングへ。大きな変化を見ることができました。

システマスナイデロ「エレメテンティ」をモジュールを活かしながら、積み木のように重ねたモデルも会場でお目見え(写真は設置イメージ)。

2024年からキコ・ベステッティさんがクリエイティブ・ディレクターとしてスナイデロに加わりました。イタリア家具界のトップブランドを横断してきた人物です。彼の経験と知見がスナイデロのモジュールシステムを昇華させ、本当に今年の展示は80周年にふさわしい大きな変化を見ることができました。

エウロクチーナ会場で発表された「Rialto 360°」はガラス扉によって仕切られたルームスタイルのパントリー&コレクションボード。ガラス張りのルーム内は輝きに満たされ、うっとりするくらい綺麗でした。

●既存モデルを時代に合わせてビスポーク

すでに人気のモデルも、天然石や仕上げなどで、インテリアのトレンドに即して新しい仕様で発表されました。

「クアドラ」は、現代的で端正な扉。1cmのフレームに囲まれた扉は、木材、マットラッカーなどが選べます。取っ手付きの仕様では、グリップが表面に質感と奥行きを与え、取っ手のない溝引き手仕様では、直線的で彫刻的なボリュームが際立ちます。キッチンだけでなく、ダイニングやリビングとのつながりも意識されたモデルです。

「エレメンティ」は、ミニマリズムをより本質的に表現したキッチンです。扉の片側に施された精密なカットが、そのまま手掛けとして機能します。2枚の扉を並べると三角形の手掛けが現れ、別の扉と組み合わせると、天板と扉の間に一本のラインが浮かび上がります。セラミック、ガラス、アルミニウム、木材という素材を通じて、空間に溶け込みながらも、静かな存在感を放つモデルです。

私の印象に残ったのは、多角的のキッチン「オルビータ」。人間工学に即した動線と多角形は、ラウンドフォルムが人気だったエウロクチーナ会場で、逆に注目を浴びました。20度の角度をつけることで、空間や人の動きに変化を与える、スナイデロの新しいシステムです。「キッチンは直線的でなければならない」といった常識から私たちを解放してくれます。

これらのモデルから見えてくるのは、スナイデロがひとつのスタイルに閉じていないということです。曲線的で彫刻的なキッチンもあれば、建築に溶け込む静かなキッチンもあります。共通しているのは、キッチンを暮らしの主役として考える視点です。

一方で「オラ」は2025年から流行の兆しを見せていたラウンドフォルムで発表。柔らかでミニマリスティクなキッチンは、これまでの「オラ」のイメージを変えてしまいそうです。

雲母を混ぜた塗料で仕上げたキッチンは自然光を浴びて、穏やかに輝きます。従来の哲学やモデルをすっかり変えてしまうのではなく、進化させていく。これは多くのイタリアブランドに共通する「タイムレス」の思考であり、スナイデロではキコ氏の参加でそれがよりブラッシュアップされたのです。

●念願の東京ショールームがオープン

そして2026年6月、念願の青山ショールームが外苑前にオープンしました。「オラ」[エレメンティ」「オルビータ」と、これまで紹介してきたモデルが展示されます。しかもサイズは日本の住まいに即したサイズに調整し、それでいて世界観を失っていません。

インタビューでは、日本市場での営業面もロベルトさんは率直に語りました。

「ヨーロッパのキッチンブランドにとって、日本は長い間、簡単な市場ではありませんでした。理由は明快です。空間の寸法、設備の条件、暮らし方がヨーロッパとは違うからです。たとえばヨーロッパでは、3メートル以上のキッチンを前提に計画することが多くあります。しかし日本では、1.8メートルほどの限られたスペースに、冷蔵庫や電子レンジ、調理機器まで収めなければならないケースもあります。そこには単なるサイズの違いではなく、住まいの文化そのものの違いがあります」

「ただし、ここ数年で状況は変わりつつあります。日本でも、海外のキッチンブランドへの関心が高まり、キッチンを住まいの中心として本格的に考える人が増えています。スナイデロもまた、その変化を感じ取って、幅広い対応をしています」

日本向けに薄めるのではなく、日本の条件に合わせながら、スナイデロらしさをきちんと伝える。その姿勢が、東京ショールームには込められています。

●スナイデロは、日本の暮らしに何をもたらすのか

日本の住宅は、欧米に比べて空間に制約があることが多いです。しかしその一方で、日本には細部への感性、素材へのこだわり、空間を無駄なく使う知恵があります。

スナイデロのようなヨーロッパのキッチンブランドが日本で本格的に展開する意味は、単に大きく華やかなキッチンを紹介することではありません。むしろ、日本の住まいの中で、キッチンをどのように美しく、機能的に、そして豊かな場所にできるかを考えるきっかけになることです。スナイデロが日本に持ち込もうとしているのは、イタリアのキッチンそのものだけではありません。キッチンを暮らしの中心として考える視点です。そのためにハイデザインでありながら、価格帯もデザインも幅を持たせたブランドとして自社をポジショニングしています。

●切手になったキッチンから、日本の住まいへ

冒頭のエピソードに戻りましょう。切手は小さなものです。けれど、そこに選ばれるものは、その国が残したい価値を映しています。

スナイデロのキッチンがイタリアの切手になったことは、ひとつのブランドの記念にとどまりません。キッチンが、デザインであり、産業であり、文化であることを示しています。

日本では、これから初めてスナイデロを知る人も多いかもしれません。しかし、その背景には80年の歴史があり、イタリアのものづくりがあり、世界各国の暮らしへ向き合ってきた経験があります。そして今、そのブランドが日本の住まいに本格的に向き合おうとしています。

 

●Snaideroの公式WEBサイトこちらから
https://www.systemkitchen.co.jp/snaidero/

●Snaideroのショールームのご予約はこちらから
https://www.systemkitchen.co.jp/showroom/

 

取材・文/本間美紀 早稲田大学第一文学部卒業後、インテリアの専門誌「室内」編集部に入社。独立後はインテリア視点からのキッチン、家具、住まい、家電、キッチンツールまで、デザインのある暮らしの取材を得意とし、建築家住宅の取材は300件以上、ユーザーとメーカー、両サイドからのインタビューを重視し、ドイツ、イタリア、北欧など海外取材も多く、セミナー活動も増えている。著書に「人生を変えるインテリアキッチン」「リアルキッチン&インテリア」(以上小学館)、「デザインキッチンの新しい選び方」(学芸出版社)。

Report& text=Miki Homma(Journalist)

 

Snaidero南青山ショールーム
東京都港区南青山2-13-2サンライズ青山201
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問い合わせ先 03-6447-1577
https://www.systemkitchen.co.jp/

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