そんな「ホテルヴィソン」、ホテルの設計に関わった建築家・赤坂知也さんがこのプロジェクトに提示したデザインの指針を知る機会があり、なるほど、と心の針が大きく触れた。どうしても紹介したい言葉なので、やはりここで少しだけ、その感動を共有させてほしい。
「素材感のあるシンプルなデザインを旨とし、江戸風や昭和レトロなど特定の時代様式を模倣するのは避けてください」「お客様に経年変化の風合いを楽しんでいただくため、メンテナンスの概念を問い直し、木材の塗装などを考え、フェイク素材はできるだけ避ける方向で」「自然となじむアースカラーを基本としてください」「日暮れや星空を大切にしたいので、必要な安全性を確保した上で、ライトアップや頭上の照明を控えてください」
穏やかな優しい言葉で大切な何かを伝えていることがわかった。
日本中の地方都市がショッピングモール化、統制の取れないテーマパーク化する中で、この施設では関わった事業者が、その言葉を大切にしている。それはこの美しい夕景の写真からも伝わっているはず。
価値観を問い直してほしい、とこの場所が言っている。
コラム=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)
Text=Miki Homma(journalist)
関連書籍:「旅するVISON」
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追記:VISONはたくさんの大企業の参画や地元企業や自治体が力を合わせて生まれた施設です。私がここで あまりそれを説明しすぎると、宣伝ぽくなってしまうので、施設の詳細は公式ホームページをご覧ください。
ホテルの周りにはたくさんの商業施設がたのしめます。ホテルも一棟貸ししている静謐なデザインのヴィラや、「旅籠ヴィソン」という家族や友人で手軽に泊まれるB&B形式の宿もあり、ミナペルホネンやD&Dデパートメントなど、人気のデザインレーベルが監修した棟に分かれていて、家族連れからデザイン好きまで楽しめそうです。