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問い直してほしい、とこの場所が言う

2022.08.24 キッチンジャーナリスト 本間美紀

【本間美紀のコラム 2022/08/22】

あっという間に夏が過ぎていきます。

来週、お知らせしますが、
今、新しいインテリアの本ができつつあります。ぜひお楽しみに!

そんな編集作業の修羅場に差し掛かる前の7月、小さな一人旅。それは意外な場所で、三重県の「ヴィソン」 という施設。

三重県の中央で熊野や伊勢志摩を結ぶ多気町という地点にできた「滞在型複合施設」だという。その中心的な施設となる「ホテルヴィソン」に泊まる機会に恵まれて、足を運んできた。

ロビーで目を引くのは、「タイムアンドスタイル」のソファ。元々はキャビネットで仕切ったり、整然とソファを並べていたロビー。開業したら、一人旅、家族連れ、待ち合わせ ─ さまざまな人が来ることがわかった。ソファをフリーなシーティングシステムとして組み直したところ、開放感のある大窓と家具が調和する空間に生まれ変わったという。

チェックインを済ませると、長い廊下が続く。導かれるような視線設計にハッとする。何が違うのかな。ただの廊下なのに。

エレベーターのロビーなども、過剰な装飾やふかふか豪華なカーペットはなく、ただそこに在る風景が「切り取られている」。

客室への廊下も細い光のラインが並び、部屋の号数も目に入るように、視線に沿った斜めの壁にレイアウトされている。

ホテルを歩く人の視線にそって、デザインがなされているので、ストレスなく動ける。だからこそ、心にゆとりができ、景色や空間の美しさに目を留められるのかもしれない。

このホテルは事業経営に、住友林業が関わっていて、木の表情や素材感を活かした内装を幾つも発見する。施設全体に植林も行われていて、今はまだ幼い木々が10年後は豊かな森に育ち、ホテルや商業施設を包んでいく様子が想像できた。

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