展覧会の話に戻りましょう。最後の章では、実際に椅子に座る体験ができます。フィン・ユールは「そこに座る人がいなければ、椅子はただの物にすぎない」、ハンス・J.ウェグナーは、「椅子は、誰かが座ってはじめて完成する」という言葉をそれぞれ残しているそうです。
自分の手で触れ、腰を降ろしてみることで、デザインを目で見るだけでなく、体で感じることができるのは、本当に貴重な機会です。ヤコブセンやウェグナーの名作だけでなく、ペリカン・チェアやチーフテン・チェア、45チェア、ベイカーソファといったフィン・ユールの椅子にも座ることができます。
会場を何度も行ったり来たりしながら展示をじっくり見た後に、これまで見てきた椅子に腰を下ろして足を休めることができるとは、何という幸福。
しかも、お楽しみはこれだけではありません。東京都美術館の中央棟1階の佐藤慶太郎記念アートラウンジにはフィン・ユールのカクテルテーブルやイージーチェア、ソファ、そして交流棟1階の美術情報室にはワーキングテーブルが置かれているのです。こちらもお見逃しなく!
取材・文=安藤菜穂子
フィン・ユールとデンマークの椅子 Finn Juhl and Danish Chairs
東京都美術館 ギャラリーA・B・C
2022年10月9日まで
休室日:月曜日、9月20日(ただし8月22日、29日、9月12日、19日、26日は開室)
開室時間:9:30〜17:30(金曜日は20:00まで) *ともに入室は閉室の30分前
観覧料:一般1100円/大学生・専門学校生700円/65歳以上800円 高校生以下は無料