
ジャン・プルーヴェは1930年代にパリでル・コルビュジエやシャルロット・ペリアンらと出会い、現代芸術家組合を設立。本展では第二次世界大戦中にはレジスタンスに積極的に参加し、ナンシー市長も務めたプルーヴェの生涯もたどることができます。
プルーヴェがデザインした椅子やテーブル、照明などの家具は、現在もヴィトラ社から製造・販売されているのはご存知のとおり。それらのオリジナルをまとめて見ることができる絶好の機会です。
なかでも椅子はプルーヴェにとってとくに重要で、「家具の構造を設計することは大きな建築物と同じくらい難しく、高い技術を必要とする」という言葉を遺しています。
美しく整ったかたちを保ちつつ、剛性と人間工学に基づく合理性が交わるデザインを探究し続けたプルーヴェの足跡をたどることができるでしょう。
加えて、本展の後半では、みずからを「構築家」(constructeur)と位置づけたプルーヴェの建築物へのアプローチにも焦点が当てられています。
多くの資料のみならず、現存する3つの建築作品の実物が展示されます。
これらはいずれも、解体・移築可能。《「メトロポール」住宅(プロトタイプ)》は、構造体とファサードを別々に展開し、展示することで、構造の特徴を浮かび上がらせています。
地下2階のアトリウムでは、プルーヴェとピエール・ジャンヌレが第二次世界大戦中に協働し、設計・建設した《F 8×8 BCC組立式住宅》も展示されます。ちなみにこの作品は、前澤友作氏のコレクションだそう。
8月下旬以降には、本展の共同企画者でもあるアートディレクターの八木 保氏のデザインによる図録も発刊されます。
八木氏は、1984年に渡米、サンブランシスコに自身のデザインスタジオを設立し、現在はロサンゼルスを拠点に活躍する人。アップルの創始者スティーブ・ジョブスとも親交があり、2000年にアップルストアのコンセプトおよびコンサルティングを手がけています。プルーヴェが世界中で再評価を受ける前の1990年代にパリでヴィンテージに出合い、コレクターとなったそう。
そんな八木氏がデザインを手がける図録は、膨大な家具・建築の写真や図面、アーカイブ資料を収録した、ポンピドゥー・センターでも不可能といわれる史上最大級の内容となる模様。こちらも非常に楽しみです。
取材・文=安藤菜穂子
■ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで
東京都現代美術館
会期:2022年7月16日(土)〜10月16日(日)
開館時間:10:00〜18:00(最終入場は30分前まで)
休館日:月曜日(9月19日、10月10日は開館)、9月20日、10月11日
観覧料:一般2000円/大学生・専門学校生・65歳以上1300円/中高生800円
お問い合わせ:TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Jean_Prouve/