革新的でモダンなドイツ魂
ポーゲンポール本社の中には、19世紀、まだシステムキッチンという言葉がなかった時代のキッチンが展示されている。それがポーゲンポールの歴史や考え方そのままだ。同社はドイツキッチンの代表的なブランドで、その歴史がそのままドイツキッチンの歴史といえる。1892年、木工職人のフレデミール・ポーゲンポールによって創業されたキッチンブランド。ちなみにポーゲンポールというちょっと耳慣れない社名はドイツ語で「オタマジャクシの池」という意味。本社に残る創業初期のロゴには、オタマジャクシの絵も残っている。ポーゲンポールの1930年代までの製品資料を見ると、ガラス戸の食器棚やテーブルを組み合わせたキッチン空間をつくっていて、初期から家具の発想でキッチンを考えていたことがわかる(写真上右)。1950年代頃から収納のキャビネットにシンクや水栓、ガスレンジが組み込まれ、急速に現代のシステムキッチンに近い姿に発展していく。70年代にはルイジ・コラーニと球体のような空間に組み込んだ近未来的なコックピットキッチンを発表した(ドイツの本社にまだ現存)。人がのっても壊れないほど堅牢な引き出しやキャビネット。すべてのデザインはこの基礎があって成り立っている。2000年代に入ってからはアルミ材を使ったプロの厨房風のキッチンやメラミン材の薄さと強さを生かしたモデルが発表される。2005年には好きなものを飾るためのオープン棚と扉付きのキャビネットを絶妙に組み合わせたデザインも。2007年にはポルシェデザインと世界初の「男性のためのキッチン」を発表した(そのお値段、なんと2000万円!)。いずれのモデルが今なおラインナップされて買えるもので、いかに普遍なデザインかがわかる。