本誌のアートディレクターを担当した宮本理希です。
今回制作した「リアルリビング&インテリア」は、世界中のインテリアのトップブランドからジャーナリストに提供されるプレス用写真を、本間美紀さんの考えるストーリーとともに「一つの形にまとめる」―そんなエディトリアルプロジェクトでした。
何千枚もある写真の中から、本間さんからまずは直感で良いと思うものを選んでいこうよと相談され、一緒に選んでいった「インスピレーション」というページがこの本のすべての始まりだったと思います。
一流のデザイナーやアートディレクター、フォトグラファーがつくり上げた家具やインテリアのコミュニケーションビジュアルです。すべての写真がエネルギーの塊のように感じ、私自身も、本そのものにもそのエネルギーを受け止める力が必要でした。
一つ一つの写真をじっくり見ていくと、家具のデザイン、素材の選び方、写真の撮り方、ブランドの文脈や世界観のつくり方を感じることができます。
なぜそのデザインだったのか、何を伝えたいのか。
そんなことを考えながら写真を選び、文字を組んで誌面にしてゆく過程は、直接会って、話をすることはできない世界中のデザイナーとの対話のような、自分のこれまでの心の領域を超える旅のような体験となりました。
また、デザインの作業を進めていくうちに、本間さんのちょっと変わった編集意図とコラムのようなテキスト、それぞれのブランドの伝えたいことが調和しながら、メッセージが表現できる本─そんなスタイルも見えてきました。
選んだ写真はすべて根拠があるようですが、理由が明確ではなく、まさにインスピレーションに導かれたものもあります。
本書を手にする人も、同じ写真をご覧になっても感じることはさまざまでしょう。正解はありません。
でもそのとき、何かが皆さんの心に起こったら、インスピレーションが広がる旅のような体験をしていただけたら―。
こんなに嬉しいことはありません。
(アートディレクター 宮本理希)
「リアルリビング&インテリア」9月15日発売
コラム=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)
Text=Miki Homma(journalist)
●前回のコラム「問い直してほしいと、この場所がいう」こちら
●次回のコラムはこちら
リアルリビング&インテリア
著:本間美紀 /誌面デザイン&アートディレクション 宮本理希
小学館刊
https://www.shogakukan.co.jp/books/09104259