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美味しい色を食べる

2022.07.25 キッチンジャーナリスト 本間美紀

【本間美紀のコラム 2022/07/25】

出張や取材が続いて落ち着かない日々が続いている。

出張が続くと、いろいろ地元の美味しいものを召し上がるんでしょう、とよく聞かれるけれど、詰まった予定の中で、ゆっくりと味わう心のゆとりを持てないことも多い。

それでもキッチン、インテリアの取材をしていると、フードライターの人とはまた違う形で、いろいろな食に出会うことがある。「映え」主義のトレンドフードや奇抜な盛り付けの’’北欧フレンチ’’(ノーマあたりのトレンドから出てきた言葉のようである)は、ちょっと辟易している。心に残るのは、景色として見えてくる、さりげない食の色だ。

先日、キッチン取材に訪ねた家では、ワークトップの色を月の表面のような’’ムーンテクスチュア’’にしたいと、にじみのあるグレーの素材を選んでいた。

彼女は三人の育児でほぼ毎日、長い時間をキッチンで過ごす。キッチン天面をお気に入りの色にすることはとても大事なことだと、話してくれた。

そんな彼女がグリルで焼いただけの野菜や、作り置きのキャベツマリネ、ドライトマトを黒い円いお皿に盛り付けはじめた時、それは絵の具のパレットのように綺麗だと思った。

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