【本間美紀のコラム 2026 /10/19】
コラムはなかなか更新できない。出張が多いから。でも旅に出ると必ずいろいろ書きたくなる。書くのをためらう時もある。そんな迷いの中、いつも文章に向かう。今日は韓国のお話。
珍しくソウルに出張があった。韓流アイドルもK-POPも知らない私は機内から見下ろすソウルを、第三東京市のようだと思う。
このソウルのタワーマンションや高層ビルを狙ってか、東京以上に海外のインテリア、水回りブランドのショールームのオープンラッシュが続いている。今回はその一環で渡韓している。

招かれたのはアメリカ・コーラーのソウルのフラッグシップショールームの公式なお披露目。建築家やデザイナーを招いてのデザインシンポジウムも併載され、すごい力の入れようだ。

韓国コーラー・カントリーマネージャーのキャシーはカナダでアパレルビジネスを学び、やることなすこと、賢くてセンスがいい。ショールームでのオープニングパーティもこんなに素敵。

夜は出張チームとローカルのレストランに行き、生まれて初めて韓定食を食べた。やかんにムル(水、薄いコーン茶)が用意されている。

ワゴンであれよあれよとさまざなおかずが運ばれてくる。これをみんなで分け合って食べる。大半が野菜で、味は滋味深く、薬膳のような味わいがあり、箸が止まらない。なくなるとすぐにお代わりがくるから、油断ならない。
とにかく皿数の多い韓国の宮廷料理と西洋のコース料理の順番に出てくる様式。この二つの文化がある時代に、混合して始まった食のスタイルだという。

わかっていはいたけれど、金属の食器がとても多い。決して高級品ではないのだろうけれど、使い込まれて鈍く光る 真鍮色の食器に目が奪われる。日常の、普段使いの、気の置けない食堂の、どこにでもある器や取り皿。

こんなに近くても、食文化がこんなに違う。ヨーロッパばかり行っているから、思わずハッとする。食器洗い機で洗えるのかな、とかそんなことを考える。ミーレの大きなショールームがあるのもみたから。
韓国の建築は若い世代の建築家にも注目されているよう。

今回出たのはカナダのムングスタジオ、(日本拠点の)香港のABコンセプトなどホテルデザインに強い事務所。けれどもスタートは隈研吾世代の柳春秀氏が1988年開催のソウルオリンピックのスタジアムの話や、山の中の観光施設の話から始まる。

若い世代のホテルトレンドの話も面白かったけれど、柳氏の年季を経た深みのある話がやはり心に残った。ソウルオリンピックから日韓ワールドカップ、そしてK-POPの聖地までを設計してきた韓国の現代を率いたひと。
・初めてのモダンコリアンディナー
前日が典型的な韓定食だったので、今夜はフレンチなのだろうかとVIPディナーの場で想像する。

ウェルカムドリンクでシャンパン、赤白のワイン、各種のドリンクが供されたけれど、食卓ではほとんどお酒がサーブされないのにまず(とくにお酒好きは)驚く。自分からバーにとりに行くか、最初から最後までシャンパンのみ。

全て食べてからわかったことだけど、この夜はすべてフレンチ風の見た目をした韓国料理だった。
里芋のピュレに柚子のジュレがかかった前菜。

2品目は韓国料理の定番とも言える鮑粥だった。英語メニューではアヴァロンとあり、アヴァロンなんだっけ、なんだっけと思いつつ。そうだ、鮑だったと思う。苦味が効いて、体に良さそう。ヨモギみたいな草も入っているのか。

ごく普通に蟹のむき身がのったサラダが来たけれど、どこでも韓国は葉野菜が新鮮で力強い。日本で水耕栽培のふにゃふにゃ葉野菜ばかり食べているから、シャキッと水が口の中で迸る感じに驚いた。これはホテルでも空港でもどこでもそうだった。

メインはいきなり、ヘビー級の二人組がやってくる。キングシュリンプと骨付きカルビを焼いたもの。プルコギ味。久しぶりだから美味しかった。白いご飯がほしくなる。
そう、このディナーではパンやバターの類は一切出ない。白、赤のワインも供されない。つまりフレンチではないということ。

サイドとしてヌードルがつくとメニュー表にあったので、私はパスタのようなものがメインに添えられると思っていたのだけれど、これはメインが終わった後に温麺としてでてきた。
温かい水キムチのような汁に素麺。急いでズームで撮ったから、画像ざらざら。

最後は名前はわからなかったけど、韓国の伝統的なお菓子とスイーツ、そしてほんのり甘い棗茶で食事が終わった。
ふーむ、これがモダンコリアンディナー。フレンチのフルコースのような押せ押せ感がなく、心と体に優しく寄り添ってくれるようだった。
コーラーのデザインフォーラムは、カンナムエリアのフローティングアイランドという川の上のガラスの建築で開催された。夜はきらきら光ってお台場のよう。若い人たちがたくさん座って喋っている。
噂のカップラーメン製造機(カップラーメンのお湯を売ってくれるマシン)が川縁にあり、若い人たちは座ってみんなインスタントラーメンを食べている。これが噂の、、、、と思ったけれど、ゆっくり見ている時間はなかった。

弾丸のように行って帰ってきたソウル。日本と色々なことが近いから、感覚的な違和感はあまりなかったけれど、いま、みんなめちゃくちゃ韓流ライフスタイルに詳しいから、もっとわかったことがあったのかな、とも。
コンビニ入る時間もなかった二泊三日でした。
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コラム=本間美紀(キッチン&インテリアジャーナリスト)
Text=Miki Homma(journalist)
