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様々な価値がめぐるインテリアの世界

2026.07.19

・リアルリビング取材のキーコンテンツはミラノデザインウィークから

「リアルリビング&インテリアISSUE 05」は7月29日に発売になります。海外から日本まで多くのインテリア見本市や新作展、イベント、そして住宅取材を通して、毎年インテリアのインスピレーションを発信しています。

数あるデザインイベントの中でも、取材の核となるのは、やはり「ミラノサローネ国際家具見本市」です。2026年は167カ国から31万6,342人が来場。出展はサローネ・サテリテを含め1,900ブランド、32カ国に及び、世界最大級の家具・インテリアの祭典として圧倒的な存在感を示しました。

ミラノサローネ代表のマリア・ポッロさん(右から2番目)

産業の力と文化の厚み、そして住まいを再定義する想像力が交差する場として、ミラノサローネはさらに輪郭を強めていました。特に感じたのは、ブランドの展示が新作を並べるだけでなく、思想や美意識、文化的背景まで伝える場へと広がっていたことです。その象徴として、会場には一点ものや限定作品、工芸性の高い製品を集めたゾーン「サローネラリタス」を新設し、一般の家具メーカーとは異なるインテリアの価値を問い直しました。詳しくは後述します。

サローネラリタスはギャラリー形式の展示スタイル

また、しばらくフィエラを離れていたB&B イタリアが本会場に復活したことも、今年の大きな話題です。単なる出展ではなく、ミラノサローネという場の求心力を改めて印象づける出来事でした。

B&BItalia

一方で、会場の広さを生かし、カリモク家具やオドー・コペンハーゲンはホテルやレジデンス形式の具体的な空間展示を展開。家具を単体で見せるのではなく、部屋の連なりや人の滞在まで含め、暮らしの空気ごと体験させる構成が目立ちました。

Karimoku Case

カルテルは混雑しがちな会場で、真っ白なブースをたて、そこに家具を美術館的な演出で表現しました。背景の海外はなんとすべてAIで家具のイメージにあわせて創出したものです。

・スモールアーキテクチャー化するキッチン

エウロクチーナでは、キッチンはもはや箱や設備ではなく、室内に小さな建築を立ち上げるような(スモールアーキテクチャー)なインテリアキッチンへ。収納、壁面、照明、ダイニングまで一体化し、住まいの中心をつくる提案が主流になりました。

Snider

同時に、アウトドアキッチンの出展も増え、調理の場は室内から屋外へ、家族やゲストが集う場所へと広がっています。FTKではAIを活用したホームシステムとして、ビルトイン機器を包括的に制御する提案が進み、屋外用設備の充実も見られました。

Miele

・特別企画は社会を取り巻く文化をインテリアと結びつける

冒頭にも書きましたがミラノサローネ国際家具見本市は、高額な取引が動くビジネスの主戦場という位置付けに加え、家具、インテリアを取り巻く文化と教養を得られる場としての進化が深まり、関わるジャンルはより広く、スピードも速くなっています。

今回の最も力の入った特別展は「AUREA(アウレア)」。フランスのメゾン・ヌメロ・ヴァンの作風が非常にわかりやすく現れた展示です。

公式には「アウレア、アン・アーキテクチュラル・フィクション」と題され、架空のホテルを想定した空間物語として構成されました。チーフデザイナーのオスカー・ルシアン・オノは、「ホスピタリティの親密なシナリオをを建築とデザインによって形にする試み」だと語っています。

サローネ・ラリタスは初登場した新セクション。メイン家具が集まる9、11ホールに設けられました。ラリタスは希少性という意味で、一点もの、限定作品、アンティーク、実験的なクラフトを扱う28のギャラリーが12カ国から集まりました。

量産家具とは違う「コレクタブルコレクション」という希少性や作家性、手仕事の価値をサローネの中で示す試みです。

「ABITO(アビト)」は、イタリア外務・国際協力省が主催し、パロンバ・セラフィーニがキュレーションを手がけた企画展です。

20世紀初頭から現代まで、各時代の衣服と家具を並置し、ファッションとインテリアが社会の変化とともに歩んできた軌跡を可視化しました。「確かにこんな服があった!」という共感を呼ぶ構成で、身体、装い、流行、住まいへと連なるライフスタイルの変遷を読み解く、社会学的な意義も感じられる展示でした。

衣類と家具の関連性が一目でわかるキュレーション。

・右脳と左脳を揺さぶり続けるイタリア人

ハイムテキスタイルやアンビエンテ、3デイズ・オブ・デザインなど、世界でインテリアやデザインの見本市やイベント、自主企画が盛り上がっています。けれどもやはりその中心となるのはミラノサローネ国際家具見本市とミラノデザインウィークだと感じています。

その理由は私には論理的には説明できません。

来場者の数やブランドの規模、出展面積では比べられないのです。イタリア人、そしてイタリアで何かを発表しようとする人には、圧倒的な独創性、自分らしさ、自社らしさという個性(アイデンティティ)、あくなき美学、または自分の頭の中に浮かんだもの実現しようとする追求心や熱意が心の中まで入り込んできます。

けれども音楽フェスやアートイベントとも違うのは、そこにやはり「長期視点のビジネス」や「ユーザー(消費者)」が存在していること。そこで発表されたものが、社会や生活の一部になる製品であるということ(アートピースであっても)。その価値と品質のバランスを見極める冷静な視点も感じます。

ミラノデザインウィークでみるものは私の右脳と左脳を揺さぶり続けながら、いつもサプライズがあります。ちなみに最初にミラノ国際家具見本市を訪ねてから27年目になります。連続で行っているわけではありませんが、20回は越えているでしょう。それでもまだ次回が楽しみな理由はどこにあるのか。エンドレスな輪に入りこんでいるのです。

 

取材・文/本間美紀 早稲田大学第一文学部卒業後、インテリアの専門誌「室内」編集部に入社。独立後はインテリア視点からのキッチン、家具、住まい、家電、キッチンツールまで、デザインのある暮らしの取材を得意とし、建築家住宅の取材は300件以上、ユーザーとメーカー、両サイドからのインタビューを重視し、ドイツ、イタリア、北欧など海外取材も多く、セミナー活動も増えている。著書に「人生を変えるインテリアキッチン」「リアルキッチン&インテリア」(以上小学館)、「デザインキッチンの新しい選び方」(学芸出版社)。

Report& text=Miki Homma(Journalist)

 

ミラノサローネ国際家具見本市(毎年4月開催)
会場:ロー・フィエラ国際見本市会場
取材協力:ミラノサローネ国際家具見本市事務局
milanosalone.com/
Photo=Courtesy of Salone del mobile.Milano

 

 

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