KITCHEN
INTERIOR KITCHEN16

オールドビーンズが香る[前編]

2020.05.18 キッチンジャーナリスト 本間美紀

『REAL KITCHEN & INTERIOR』では、これまでにたくさんの実例を紹介してきました。単行本『人生を変えるINTERIOR  KITCHENはこれまでの取材を集大成した1冊。家やキッチンの大切さについて考える人も多い今、連載形式でこの単行本の内容を本サイトにて無料公開いたします。その16回目。夢をかなえたインテリアキッチンのストーリーです。

My REAL KITCHEN04 : INDUSTRIAL CHIC
Ayako’s Kitchen 

●自転車にコーヒー、二人の趣味の場所

亜矢子さんの朝はコーヒーを淹れる香りからはじまります。キッチンというより、焙煎所のような雰囲気が漂っています。
「夫がヴィンテージのコーヒーグラインダーを譲り受けたのがきっかけで、時間がある限り、豆を挽いてコーヒーを楽しむようになりましたね。休日の朝には夫が豆を丁寧に挽いてコーヒーを淹れます」
住まいは大きな箱のような空間で、建築家の井上聡さんが設計しました。

椅子はグザビエ・ボシャールが1934年にデザインしたトリックスの「エーチェア」で、インダストリアルな雰囲気が漂います。照明はポールに業務用の電球を巻きつけたもの。

──キッチンも家具もオブジェのように決まっています。

「選んだのはキッチンハウスから設計当時出ていた〝アーキワン〞というモデルです。にじんだような墨色の箱のような感じが好きでした。家づくりをはじめたころはステンレスの業務用をアレンジする、コンクリートでつくってしまうなど、さまざまなアイディアが出ましたが、このキッチンを設計者の井上聡さんにすすめられたとき、潔いほど直線的な箱のような姿に、迷いなく決められました」

──日本のキッチンの色といえば長く清潔感のある白や、温かみのある木が主流でした。グレーやブラックの濃色のキッチンは、ずいぶん一般的になってきたように思います。

「特に意識したわけではないけれど、夫婦そろって無駄のないものや、素材そのままの表情が見えるものが好きです」

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