《My kitchenhouse》人気のコラボ連載「マイキッチンハウス」。2026年の「フル オーダー編」3回目
軽井沢に近いこの別荘のキッチンは、ご夫妻それぞれの住まい経験を経てたどり着いた、ひとつの答えがあります。敷地はゴルフ場のクラブハウスだった場所です。クラブハウスは、軽井沢の建築文化に大きな影響を与えたアントニオ・レーモンドが手がけた建築で、太い梁が残った風情のある洋風建築だったそうです。

文化的な建築を尊重するご主人のご家族が所有していた建物でした。仕事も子育ても一段落したご夫妻は、自然の中でゆったりと過ごす暮らしを求めて、この場所に別荘を建てることにしました。その中心となったのがキッチンです。

「東京の家が最初で、その家に影響を受けて私の実家を新築し、そしてこの別荘が三軒目になります。約40年前になりますが、結婚して最初に家を建てたときに、キッチンハウスを選びました。銅の特注レンジフードを造作したり、当時としてもかなり凝ったキッチンでした。今回も夫と迷わず、キッチンハウスのフルオーダーに決めたんです」と奥様は話します。
グレイッシュな素材をベースに、L字型のキッチンとテーブルをつなげたレイアウトは、料理好きのご主人と、集まる友人たちが共に過ごすための最適解でした。

「みんなが集まって、みんなで料理をする場所なので、少し明るいグレーがいいなと思いました。母の家で使ったグレーがとても良かったので、その記憶もありましたし、キッチンハウスさんのショールームを見て歩く中で、やっぱりグレーや黒が好きだなと感じたんです」と奥様。
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空間の中で印象的なのは、所々に使われている、時を経た木材です。これは、もとのクラブハウスで使われていた太い梁を捨てずに残し、新しい住まいに生かしたものです。

幼い頃から茶道や書に親しむ母のもとで育ち、古いものや器に自然と心を寄せてきた奥様にとって、木の質感や日本的な落ち着きは、住まいに欠かせないものでした。

レーモンド事務所ゆかりのその木を合わせて、コーヒーテーブルも仕立てました。古い建物の記憶を、新しい暮らしの中に受け継いでいるのです。

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キッチンの使い勝手を細かく検討したのは、実はご主人の方でした。「僕は料理が大好きなんですよ。特におもてなし料理。こちらに来てからは毎週のように友人が集まります。多い時は20人ほどでワインを開けて、盛り上がります」

5人兄弟の4番目として育ち、幼い頃から自分で料理をすることを覚えました。10歳の頃にはドーナツを揚げていたそうです。さらに学生時代にはアメリカに留学し、ホームステイ先で日本とはまったく違う、大きなキッチンのある住まいを見て、スケールの違いに大きな衝撃を受けたといいます。

「大きくて使いやすくて、ものをしまう場所がきちんと決まっていて、何もかもが収まってきれい。しっかり料理できるのに、使っていないときはインテリアとしても美しかった。当時の日本のキッチンは、まだ作業するための台所でしたから、世界にはこういうキッチンがあるんだと思いましたね」とご主人は回想します。

キッチンだけではなく、住宅のスケール、トイレ、ドアノブに至るまで、その完成度は日本の住宅設備との違いを強く意識させました。家を建てる際、キッチンに細かく意見を言うご主人に、当時の担当者が「台所は奥様の場所ですから」と言ったというエピソードもあります。けれど実際には、ご主人こそ料理をする人であり、キッチンのあり方に強い考えを持っていました。
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奥様もまた、ご主人の影響を受けながら、ものを置きすぎない美しさ、すべてがきちんと収まる空間の心地よさを学んでいきました。海外の友人宅で見た、トール収納を備えた、天井までのあるキッチンや整った収納にも心を動かされたといいます。

キッチンのインテリアも、いただきものを飾っていた奥様に、ご主人が「この方がきれいだろう」と言ってものを減らしていく。そんな日々のやり取りの中で、二人の美意識は少しずつ重なっていきました。

設備にはミーレの食洗機とオーブンを備えました。ご主人は「食器は自分で洗うもの」という考えも持っていましたが、機能性の高さを知り、採用に至りました。オーブンは、オーブン料理を好む娘一家の意見も反映されています。

日々の食事は、軽井沢や佐久の野菜、地元の豆腐や豆類などが中心です。東京へ戻るときにも、クルマいっぱいに買って帰るほど、この土地の食材を大切にしています。
「新鮮な素材が手に入るので、スパイスや塩だけで、素材の味を生かすシンプルな料理も多いですね」と奥様。そのために、スパイスがひと目でわかる引き出しも、キッチンハウスの収納アクセサリーです。

一方、ご主人は料理にも食材にもかなりの凝り性です。これまで食べ歩いてきたおいしい味を、たちまち再現してしまう腕の持ち主で、多くの友人から料理のリクエストを受けるそうです。「野菜も土づくりから考えられていたり、豆腐もつくり方にこだわっていたり、本当に手をかけた、質の良い食材が多いんだよ」と、ご主人も食への深い関心をのぞかせます。

ガスコンロはリンナイの「G:LINE」で、日本製では最大の火力が使えるバーナーを搭載しています。お手入れが楽なIHクッキングヒーターもあり、電気とガスのハイブリッド仕様です。
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器も、良いものを揃えたいという二人。奥様にとって器を楽しむ感覚は、茶道に親しんだお母様から受け継いだものでもあります。

若い頃はウェッジウッドやロイヤル コペンハーゲンを求めて、夫婦で海外へ足を運び、洋食器も揃えました。フルオーダーなら、食器の数や形にあわせた引き出しの制作も可能です。

「食器はね、私は昔から古いものが好きでした。やっぱり母がお茶をやっていたせいか、茶道で『拝見』という習慣がありまして、『この器はこういう由来のものです』という話を、子供の頃に横で聞いていたんです。そういう経験から、食器を楽しむということを自然に覚えたんですね」と奥様。別荘にはお茶室もあります。

キッチンは、単なる調理の場ではありません。家族の記憶、海外で得た視点、日本の器や古いものへの愛着、そしてそれぞれの住まいで得た学びが重なり合う場所です。

夫妻はそれぞれ、実家や新婚時の家など、家を建てる経験を重ねてきました。
「家は三軒建てないとわからないというけれど、まさにその経験が結実したね。ここにいるとすべてが心地よくて、東京と行ったり来たりしているけれど、すぐにこちらへ戻ってきたくなる」とご主人は話します。

だからこそ、この家のキッチンには、流行ではない深みがあります。若い頃の直感、家族とともに育った暮らし、そして成熟した今の選択。そのすべてが、この別荘で息づいています。
住宅設計:ホクシンハウス株式会社
取材・文/本間美紀 早稲田大学第一文学部卒業後、インテリアの専門誌「室内」編集部に入社。独立後はインテリア視点からのキッチン、家具、住まい、家電、キッチンツールまで、デザインのある暮らしの取材を得意とし、建築家住宅の取材は300件以上、ユーザーとメーカー、両サイドからのインタビューを重視し、ドイツ、イタリア、北欧など海外取材も多く、セミナー活動も増えている。著書に「人生を変えるインテリアキッチン」「リアルキッチン&インテリア」(以上小学館)、「デザインキッチンの新しい選び方」(学芸出版社)。
text=Miki Homma(Journalist)
撮影/岡村享則 photo=Yukinori Okamura
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[My kitchenhouse] はキッチンハウスとリアルキッチン&インテリアがお届けする、リアルなキッチンの今を伝える連載です。
お問い合わせ/キッチンハウス 東京店 世田谷ショールーム TEL:050-2018-8163
www.kitchenhouse.jp