【リアルキッチン&インテリア担当編集 宮澤明洋のコラム 2022/06/03】
上野東照宮の神符授与所がリニューアルされ、4月29日より、その先の拝観エリアにある奥参道と静心所が一般公開されています。公開に先駆けて、4月のとある夕暮れに開催されたオープンハウスに出かけてきました。NAP建築設計事務所、中村拓志さんのお誘いです。
「上野」と聞いて、まずはじめに思い出すのは、上野恩賜公園内にある博物館や美術館群と並んで、上野動物園ではないでしょうか。JR上野駅の上野駅公園口からまっすぐに歩いて行くと、そこが上野動物園東園の正門となりますが、そこに至る手前、大噴水を右に見ながら、左方向に道をそれていくと、大きな鳥居が見えてきます。
ここが上野東照宮の入り口。簡単に言うと、徳川家康公を神様としてお祀りする神社=東照宮のひとつです。
お披露目となった神符授与所と静心所を設計したのは、中村拓志&NAP建築設計事務所。インテリアに興味がある方なら、昨年、Time & Style(タイムアンドスタイル)から発売された「タケノコチェア」のデザイナーとして、名前を目にしたことがあるかもしれません。
4月17日に静心所に先駆けて本オープンした神符授与所は、参道正面にある唐門とその先にある社殿から、向かってやや左手側に位置しています。
入って右側には御朱印やおまもり、御札・絵馬などを受けるためのカウンターがありますが、ここに正対するとなんだか身体が右へ右へと引っ張られるような感覚に襲われます。その理由は天井を見上げてみるとわかります。
屋根は、木材を菱格子状に組んだ構造で支えられていますが、その交差する二つの軸のうちの一つが、いま社殿のある右側へと延びているからです。実はこの軸線、社殿と日光を結んでいるそうです。では、もう一方の軸線はというと、こちらは家康が晩年を過ごし、そして亡くなった駿府(現在の静岡県静岡市)にある久能山東照宮の方角をさしています。
おまもりや御札は、「買う」ではなく「受ける」「いただく」という表現を使うように、神符授与所は単なる商業施設とは一線を画します。社殿で清められた神符を授与するという「儀式」の際に、近くの社殿だけでなく、日光や久能山、そして約400年という遠い過去までもを意識するのは、意味があることなのかもしれません。
なお、この神符授与所では、家康公の月命日である毎月17日に数量限定の「昇龍守」(強運・勝利・出世の御守。毎月、なくなり次第終了)を受けることができます。