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Movie for hint of interior design

アイリーン・グレイとコルビジェの映画

2017.10.15 キッチンジャーナリスト 本間美紀

●詩的で哲学的なヨーロッパ映画

インテリア出身のアイリーンが恋人の建築家の力を借りて作ったヴィラの壁に、コルビジェがアヴァンギャルドな絵画を描いてその世界観を崩していくというエピソードが骨組みなのですが、ここに至る経緯を彼らに関わる様々な人物をパラレルに描写して紡いでいます。わかりにくいけど感性に訴えてくる!ああヨーロッパ映画だなあ、というかなりコンセプチュアルな映画です。ハリウッド映画のようなわかりやすさを期待する人は、予習が必要ですよ。とにかく哲学的で詩的な映画です。マルグリット・デュラスのような表現手法を感じます。

左がアイリーン、右から二人目がイケメン建築家の恋人、右端がコルビジェです。

ちなみにアイリーン・グレイは当時、いち早く同性愛を表現し、一方でルーマニア人イケメン建築家のの恋人から激しくインスピレーションを受け、恋人やコルビジェから強制される男性優位の社会に反旗を翻しました。建築界のシモーヌ・ド・ヴォーヴォワールのような才気走った女性でした。

頭が良くこだわりも強い美女・アイリーン。英語の中ではイメージを膨らませるため、一人、部屋の中で優雅に舞うシーンもあります。魔性の女とも言えるかも。。。。

●映画を見た直後の私の感想(8月の試写会当時すぐ後の感想なので、そのままの気持ちが出ていますので、ご笑覧ください)

・建築やインテリアに詳しい人じゃないとストーリーが追えない(人物や建築に関して予習が必要)
・感情豊かな表現がいろいろあったが、正直分かりにくいところもある? ただし私は予備知識があったから楽しめた
・筋書きのメリハリがはっきりしている米映画に比べ、ヨーロッパ映画はエモーションの部分を重視するんだなと改めて感じた
・映画の中に何度か横真正面からのアングルで撮るシーンが出てきて、その構図と色使いがグラフィカルとして美しく目が釘付け
ジュリアン・レノン(ジョン・レノンの息子)が撮ったというスチール写真が素敵すぎて気になる。映画というより写真集でみたい
・アイリーンのアングロサクソン系の真面目さ(ある種のきつさ、自分にも他人にも厳しい)、コルビジェのスイス人の狡猾さと異才さ、恋人ボドヴィッチのルーマニアン東欧ダメ男と、日本人はあまり意識しないかもしれないけど、EU圏内で見たらお国柄を際立たせたキャラの描き方。欧州人は面白く見られるのでは
・コルビジェが「パンツ一丁」(海パンですけど)で出てきたシーンが多すぎて、びっくりした(笑)、確かにあの写真は有名だけど!
・建築学科やインテリア学科の学生さんがみたらいいと思います
・筋書きというより美しいインテリアや建築、フランスのライフスタイルを大画面で堪能でき

ちなみに原題はThe Price of Desire、この言葉は何度か、セリフの中にで映画の中で繰り返されます。映画の邦題によくあることですが、甘ったるい日本語タイトルに引きずられず、この意味をよく感じていただくのがオススメです。家やキッチンをつくる人は何度もぶつかるテーマでしょう。

10月14日から東京・渋谷の東急の文化村で公開されています。アートや文化を鑑賞するように楽しみたい1本です。

あらすじや上映館の詳細は次ページから。

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