TOPICS
NO PROBLEM!

ものをどこまで「問題ない」と認める?

2017.07.09 キッチンジャーナリスト 本間美紀

●インドでは「問題ない」とみんなが言う

インド旅行中に小沢さんたちがカフェでグラスとして出会ったのが、ヴィジョングラスです。30年以上、生産されているグラスでチャイなど熱い飲み物を入れても大丈夫。インド人なら子どもの頃から知っている国民的なグラスなのだそうです。もともとは化学実験用の耐熱グラスを作っている会社による家庭用のコップだそう。

シンプルな形で中の食材の姿を美しく見せる。二人はすぐに写真を撮り、インドの荒物屋に駆け込み購入して帰ったそうです。フードデザイナーでもある小沢さんのインスピレーションを刺激するグラスでもありました。

耐熱性があるのでケーキ型になり、
シンプルなので、中の料理を綺麗に見せ、
液体も切り取られたかののように綺麗に
実験用ビーカーの製造技術を生かしているから、こんな風にご飯を炊くこともできます。食器洗い機もOK。 photo=Takuya Neda

これに惚れ込みインド・ボロジル社から輸入を開始したのはいいのですが、届いてみると日本の流通には出せないグラスが多く、B級品判定をして在庫の山になってしまいました。

「最初は届いたグラスが埃まみれで一つ一つ拭き上げて、検品する気の遠くなる作業でした」(國府田さん/広報紙より)検品作業中に小沢さんたちの目には小さな傷や歪みは、実用には問題あるものが少なく、むしろ愛嬌のある個性に見えるものもありました。再びインドに行き、同じ製品の販売店に行くと、彼らは一様に「これはノープロブレムだ」と言う寛容さに驚いたそうです。

ボロジル社の製造工程を解説した図も展示。どうしてこの傷ができるのか、工程を知ることで納得です。

辛抱強く、ボロジル社に日本市場にかなった品質を交渉しつつも、「これは本当にB級品なのだろうか」とグラスを手に取ることも多かったというヴィジョングラスの輸入チーム。「製作過程で必ず生まれてしまうB品、「NO PROBLEM!(問題なし)として受け入れることを通して、暮らしの中に寛容さを取り入れ、日本の今の生活を見直すヒントになることを目指します」(小沢さん)

どこまで、ものの品質は「ノープロブレムなのか」。その答えはあなたの中にある価値観が教えてくれます。東京は17日までですが、神戸では夏休みの間楽しめますよ。

取材・文/キッチンジャーナリスト 本間美紀

キッチンをインテリアから考える本「リアルキッチン&インテリア」著者。自分らしいキッチンとインテリアを実現した住まいの取材を続け、取材件数は300件以上。そこに暮らす人、メーカーや売る人など、多方向からのインタビューからデザインとキッチンのある暮らしを考え、執筆。セミナー活動も多数。

東京展は7月17日まで(グットデザイン丸の内)
神戸展は7月29日〜8月13日までデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)
会期中無休
入場は無料
www.visongrass.jp/np2017/

PREV 1 2

Recommend

TOP